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イタリア映画祭だけではない、イタリア

ここ近年、イタリア映画が世界的な盛り上がりをみせている。ここ日本でも、イタリア映画祭の人気も手伝って、以前に比べると随分劇場公開されるイタリア映画の数が増えてきたように思える。
そんなイタリア映画関連のイベントでも、今回紹介する「映画で旅するイタリア」は、本国では押しも押されぬ巨匠として確固たる地位を築いている監督たちの、日本ではなかなか見ることのできない作品に光を当ててくれる貴重なイベントである。
今年の二月末から行われているイベントだが、残念なことに二月、三月分はすでに終了しており、観ることができない。
しかし四月以降のラインナップも魅力的なものが多いので注目されたい。

今後のラインナップ

風はめぐるー4月26日上映ー

フランス国境に近いアルプスの麓。少数言語オック語の話者が暮らす高齢化の進んだ山村。フランスで畜産を営んでいたフィリップが、地元での原発新設を機に、家族と山羊を連れて村へ引っ越してきた。当初は寛大に迎えてくれた村人たちだったが、嫉妬と無理解からフィリップ家族の存在を疎ましく思うようになり、共存はしだいに難しくなる。

引用: www.doughnutsclub.com

その昔、ネオレアリズモと呼ばれる映画のムーヴメントがあったのを知っている人がいるかもしれない。戦中戦後の混乱のイタリアをリアルに描き、その後の映画史に大きな影響を与えた社会派映画のムーヴメントである。
時が流れること60年、現代版ネオレアリズモとも呼ぶべき監督がジョルジョ・ディレッティである。イタリア映画祭でも2本上映され、好評を博した。
日本でもよく知られるスローフード運動、牧歌的で好意的な受け止められ方をするこの運動の暗部を見事に切り抜いたこの作品は、イタリアの雄大な自然とも相まって、観客に鮮烈な印象を与えるだろう。

青い眼のアリー -5月31日上映ー

ローマから程近い海水浴場オスティアの冬。エジプト移民2世の少年ナデルは友達とつるんで盗みを働く日々。16才のナデルにはイタリア人の彼女がいるが、家族からは付き合うなと言われている。ある日彼が家出をしてから過ごす1週間。寒さと孤独、ひもじさと恐怖に耐え、友情を失いながらも自分のアイデンティティを追い求めるナデルが胸を打つ。

引用: www.doughnutsclub.com

今、世界的に移民、それもイスラム系の移民が問題になっている。それを受けてか映画界のほうでも移民問題がトレンドのようだ。昨年公開された「サンバ」や、日本でも大人気を博した「最強のふたり」(どちらも同じ監督)、日本でいえば「バンクーバーの朝日」など、題材として取り上げている映画は散見される。
イタリアもまた例外ではない。
まさに本作はイタリアにおけるイスラム系移民の問題を扱ったもの。ここで描かれている内容は、あるいはもうすでに他人事ではないのかもしれない。
タイトルの「青い眼のアリー」(青い眼はもちろん白人の象徴、アリーはアラブ系に多い名前)が示唆的で、非常に興味をそそられる。

ただ彼女といたかっただけなのにー6月28日上映ー

ミラノにあるグローバル企業の若きエリート社員マルコ。有能で人望も篤い彼は、ある日フランス人上司に重要な任務を言い渡される。それは、3ヶ月間で25人のリストラを断行すること。成功すれば、十分な報酬と出世が約束されるという。家族も恋人も職場での人間関係も省みず、彼は夢中で首を切り続けるのだが…労働条件や環境がいとも簡単に人を変えてしまう様子を描いたこの物語は、今の日本にもアクチュアルに響く。

引用: www.doughnutsclub.com

イタリアの経済的困窮を語るとき、イタリア人はなまけものだ、という言い方をすることがある。それもたしかに一面としてあるかもしれない。
しかしながら一方で、その根底には社会構造や歴史による必然的な強制があることも見逃してはならないはずだ。
主人公は職務に忠実で優秀なビジネスパーソンだが、そうであらんと欲すれば欲するほど、うまくいかなくなってしまうという矛盾が描写されている。
この映画において我々が観るイタリアの姿は、派遣切りや大規模なリストラが世間をにぎわす昨今の日本の未来なのかもしれない。

とはいえ、あくまでこの作品は社会派エンターテイメントとのこと。肩の力を抜いて楽しまれたい。

フィルムがない!ー7月26日上映ー

ローマの零細映画製作会社「ボッチャ・フィルム」には製作費がまったくなく、あるのはいくばくかのフィルムのみ。そんな現状を打破する傑作短編を撮ろうと、リーダーのファビオは、古き良きリアリズムの傾倒者マッシモ、ハリウッドにご執心のエウジェニオと共に、荒れ狂う創作の海へ泥舟で漕ぎ出してゆく。現在ではイタリア映画界の屋台骨として活躍する製作陣が実名で出演したカルト・コメディー。

引用: www.doughnutsclub.com

トリを飾るのは、上記の「ただ彼女と眠りたかっただけなのに」の監督エウジェニオ・カプッチョの初長編作品である「フィルムがない!」。
おもしろいのが、本作で芽の出ない映画製作者役を実名で演じた3人が、いまやイタリア映画界を支える人材として評価されていることだ。
例えば本作でネオレアリズモに傾倒する若者を演じたマッシモ・ガウディオーゾは、今や「ゴモラ」の監督マッテオ・ガローネに2回のカンヌ審査員グランプリをもたらした、イタリアを代表する脚本家。

まとめ

骨太な映画が好みの方は前者2つを、エンターテイメントよりのものが好みなら、後者の2つをおすすめする。

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編集部 三宅隆平

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