カテゴリ: 大人の嗜みガイド

エスプレッソは嗜みだ

エスプレッソは飲むものではない。嗜むものである。
エスプレッソにたいして多くの日本人が抱いているイメージ、すなわち、苦い、飲みにくい、量が少なくてコスパが悪い、こうした諸々は、エスプレッソを飲むものとして捉えていることから生じる誤謬である。

単に喉を潤したいと考えているだけなら、あなたはマックコーヒーを飲むべきだ。おしゃれを演出したい、女子受けを狙いたいというのであればスターバックスに行けばよろしい。煙草を吸いながら時間を潰したいという人にはルノアールをおすすめする。
だがもしあなたが自分自身の生を充実させるような価値ある一杯を望んでいるなら、私はあなたの前にそっとデミタスカップを差し出そう。

エスプレッソとは何か

エスプレッソは、日本ではあまり普及していないが、イタリアやフランスでは最もポピュラーなコーヒーであるといわれており、コーヒー(カッフェ)といった場合、同地ではほぼ間違いなくエスプレッソのことを指す。

蒸気により高圧をかけて(9気圧ほど)短時間で抽出しているため、シャープで濃厚な風味を持つ。
そうした濃厚さの一方で、深煎りのコーヒー豆(焙煎の途中でカフェインが揮発している)を使用していることや、短時間で抽出しているため、カフェイン含有量は普通のドリップ式のコーヒーよりも少なくなっているのだという。

イタリア人とエスプレッソ

エスプレッソはイタリア生まれのもの。朝、仕事に行く前に、あるいはたっぷりのランチの後に、午後の休憩のひと時に、彼らはいつもエスプレッソを飲む。
そんなエスプレッソの歴史は古い。1806年、ヨーロッパ大陸を制覇したナポレオンが、イギリスに経済制裁を加えるべく大陸封鎖令を発したところにまで遡るのだという。これによってコーヒー豆が極端に不足した大陸では様々な対応策がとられることになる。
ローマ最古のカフェとして世界的に名高い「カフェ・グレコ」でもそれは同様であった。三代目オーナーのサルヴィオーニは、単純にコーヒーの量を三分の二に減らし、価格を下げて小さなコーヒーカップで提供することにしてこれをしのぐことにした。こうして生まれたのがデミタスカップ(エスプレッソ用のカップ)である。
それから一世紀、1901年に濃厚なコーヒーを高圧力で抽出するためのエスプレッソマシンが作られた。このエスプレッソマシンによって、今日飲まれる形のエスプレッソが急速にイタリアで普及し、イタリア人にとって欠かせないものとなった。

イタリアにはカフェ・ソスペーゾという文化がある。最近廃れつつある文化だが、これは裕福な人がバールで一杯のエスプレッソを飲むとき、あえて二杯分の代金を払い、貧しい人がただで飲めるようにする、というもの。イタリア人のエスプレッソへの情熱を感じるとともに、イタリア流“粋”の象徴ともよべる文化だと思う。

エスプレッソの普及

イタリアやフランスで早くからエスプレッソが好まれていたということは前述のとおりだが、それが世界的に広まったのはアメリカのコーヒーチェーン、スターバックスによるところが大きい。スターバックスは、それまでアメリカでもイタリア系の人々の間でのみ普及していたエスプレッソを大々的にフューチャーしたのである。エスプレッソに生クリームやミルクなどを加え創意工夫を凝らしたシアトル系エスプレッソとよばれるカプチーノやカフェラテは、当時のアメリカにおけるイタリアブームも相まって大いに人気を博した。
その後スタバを筆頭とするシアトルのコーヒーチェーンが日本を含む世界中に広がり、エスプレッソも知名度を高めることになった。

エスプレッソの嗜み方

エスプレッソはストレートで飲むものではない。世界でもエスプレッソを無糖で飲むのは飲み方を知らない日本人くらいだと言われている。

シュガースプーンに山盛り一杯、たっぷりと砂糖をすくったら、さらさらと静かにエスプレッソの中に落とす。
混ぜすぎないこと。エスプレッソの上にあるヘーゼルナッツ色の泡がなくなってしまうからだ。クレマと呼ばれるこの泡は、コーヒー豆の中にある二酸化炭素が抽出したときにでてきたもので、エスプレッソ特有の華やかなアロマをとじこめる働きがある。砂糖を静かに落としたとき、クレマの上にしばし留まって、ゆっくりと沈んでいくようなエスプレッソが、良いエスプレッソの条件だ。

そして飲むときも普通のドリップコーヒーのようにちびちび飲んではならない。たまに、なめるようにしてエスプレッソを飲んでいる人を見かけるが、論外。二口か三口でクイッとやるのが、エスプレッソの魅力をもっとも楽しめる飲み方だ。淹れてから時間のたったエスプレッソを飲むと、冷めているだけでなく(もちろん量が少ない分冷めるのも早い)、芳醇な香りも飛んでいってるので、さながら泥水を啜っているような気分になる。淹れたてのものにさっと砂糖をいれ、そして素早く飲み干そう。コーヒー豆の、凝縮された複雑なアロマが、鼻孔を軽やかに通り抜けるのを感じるだろう。質の良いカカオでつくられたビターショコラを食べたときにわかる、あの特有のフルーティな酸味にも通ずる香りがそこにはあるはずだ。
飲み干した後の砂糖を、スプーンですくって食べるのも楽しみの一つ。砂糖の甘みにエスプレッソの、鮮明な酸味、どっしりとした苦味が加わり、さながら上質なスイーツを食べているかのよう。

そして飲み干し、砂糖も食べ終えたら、会計をすませて店を後にしよう。それが粋というものだ。イタリアには、街の至る所にバール(喫茶店兼酒場)があり、朝、イタリア人達は、バールの立ち飲み席で素早くエスプレッソを飲み、仕事に向かうのだという。エスプレッソの独特な余韻を口中に感じていれば、いつもの街並みもどこか違って見えるだろう。

最後に

今回の記事では、イタリア流エスプレッソについて、きわめて基本的な知識や、心構え、飲み方を指南させていただいた。
以下でエスプレッソの淹れ方、おすすめのエスプレッソマシンを紹介しているのでご一読願いたい。

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編集部 三宅隆平

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