カテゴリ: 大人の嗜みガイド

EUフィルムデーズとは

「EUフィルムデーズ」は、欧州連合(EU)加盟国大使館・文化機関が提供する各国の作品を一堂に上映するユニークな映画祭です。上映される作品は、ヨーロッパの映画製作者の幅広い才能を披露するとともに、EUが重視する文化的多様性をさまざまな表現で映し出しており、まさに多様な魅力に富んだものとなっております。

引用: eufilmdays.jp

ヨーロッパの主要な映画祭でも受賞している映画を合計29本上映するこのイベント、なんといってもEU加盟国24か国の作品をとりあげるという多様性が特徴。
映画だけではなく、ヨーロッパの文化や息吹を感じられる貴重なイベントである。

EUフィルムデーズ2015をおすすめする三つの理由

2003年にスタートし、今年で13回目を迎えたEUフィルムデーズ、毎年通をうならせる魅惑のラインナップで映画ギークたちを惹きつけてきたこのイベント、より多くの人に知ってほしいという思いからアクセトリー編集部が紹介させていただく。

理由1ーロケーションのよさー

東京国立近代美術館フィルムセンターというと、東京、銀座まで徒歩圏内の便利な位置にある。映画を観た後に丸の内や銀座を散策するのも悪くないだろう。
もちろんそれだけではなく、東京国立近代美術館フィルムセンター自体に映画に関する貴重な資料が集められているのも見どころだ。

理由2-チケットの安さー

一般 520円、高校・大学生・シニア(65歳以上) 310円、小・中学生 100円というチケットの価格設定も魅力。
この手の映画祭としては破格の安さだ。

理由3-上映作品ー

上映作品のチョイスもセンスがあってよい。
ヨーロッパというと、どうしてもイタリアやフランスをイメージしがちだが、この映画祭ではチェコやルクセンブルクなどの映画も上映しており、まさにヨーロッパを味わい尽くせるようになっている。

アクセトリー編集部おすすめの映画

歴史を題材にした骨太映画ータンジェリンー

1990年代、紛争中のアブハジアで暮らすエストニア人のほとんどが本国に引き上げる中、イヴォとその友人はミカンの収穫を終えるまでと同地に残る。しかし、二人の村でも戦いがあり、イヴォは敵同士の二人の負傷者を自宅に受け入れ看病することに……。

引用: eufilmdays.jp


アブハジアというと多くの日本人には耳慣れない地域だろう。しかしグルジアといえばわかる人もいるのではないだろうか。
1990年代初頭、ソ連が崩壊しそれまでソ連の支配下にあった諸地域に独立の機運が芽生えた。黒海沿岸のグルジアやアブハジアもそのうちの一つである。彼らはそれまでソ連の独裁によって押さえつけられていた自由自治、民族運動への思いを爆発させたのであった。
ただ、ここでややこしいのは、アブハジアがグルジアの支配下にあったということだ。グルジアはソ連からの独立を求めたが、アブハジアはグルジアからの独立を求め、その結果両国の間で紛争が発生したのである。
本作が描くのは、そんな紛争下のアブハジアに残されたエストニア人農夫に一つ屋根の下で看病されるグルジア人兵士とアブハズ人兵士だ。

第72回ゴールデングローブ賞外国映画賞、第87回米・アカデミー外国映画賞にノミネートされた。

5月29日 (金) 19:00
5月31日 (日) 14:00

アカデミー外国語映画賞受賞作品ーイーダー

1960年代初頭のポーランド。孤児として修道院で育てられた少女アンナは、ある日院長から伯母の存在を知らされる。一度も面会に来ない伯母に興味を持ったアンナは彼女を訪ねるが、そこで伝えられた言葉に衝撃を受ける。「あなたの名前はイーダ・レベンシュタイン、ユダヤ人よ」。突然知らされた自身の過去。彼女はなぜ両親に捨てられたのか? イーダは伯母とともに出生の秘密を知るため、旅に出る。ホロコーストの悲劇、共産主義の抑圧といった歴史の波を背景に、一人の少女が意志を持った女性へと鮮やかに変貌していく様を詩的リアリズムで表現した傑作。

引用: eufilmdays.jp

ポーランド映画を代表する監督(といってもおもに英国で活躍している監督だが)であるパヴェウ・パヴリコフスキにアカデミー外国語映画賞の名誉をもたらした傑作。
日本でも去年の夏に公開されたので、すでに観た人もいるだろう。
カメラワークが秀逸なこの映画、観賞の際は、なぜその位置にカメラがあるのか、なぜカメラはこのタイミングで動くのか、などといったところにも注目してほしい。

6月6日 (土) 11:00
6月9日 (火) 15:00

腹の底から笑えて、観た後には考えさせられるーパンクシンドロームー

フィンランドのパンクシーンをにぎわす、とんでもないバンドが現れた!とにかく服の縫い目が気になるギターのペルッティ、足の爪は自分で切りたいヴォーカルのカリ、美人議員が大好きなベースのサミ、おうちを出たくないドラムのトニ。知的障害を抱えるこの4人の個性がぶつかり合うパンクバンド〝ペルッティ・クリカン・ニミパイヴァト″。ワークショップの一環で結成されたこのバンドの練習は一筋縄にはいかず、メンバー同士の諍いがしばしば勃発する。しかし、そのパワフルで激しいライブパフォーマンスと過激な歌詞が評判となり、バンドの人気に火がついた! カメラは彼らの日常生活から、レコードデビューや海外ツアーまでの、成功と紆余曲折の軌跡を丹念に追う。 「精神科施設のメシはまるで豚のエサ」「いつかグループホームを爆破してやる」「少しばかりの敬意と平等が欲しい」「権力者はペテン師だ 俺たちを閉じ込める」など施設や社会への不満を、強烈な歌詞にぶつける彼らの姿は、パンクファンのみならず、多くの人々を魅了し、笑わせ元気づける。そして、彼らの歌詞から垣間見える「社会を変えたい、障害者に対する人々の意識を変えたい」という強い想いに心を揺さぶられる。世界一アナーキーでクールなパンクバンドの魂の叫びは日本の観客の心をも惹きつけてやまないだろう。

引用: punksyndrome.net

障害ってなんなんだ、という疑問は、とくにそれが知的障害である場合、顕著にあらわれる。どこまでが個性で、どこからが障害なのだろうか。社会、それも現代社会への不適合をもって健常者と障害者を分けているのだとしたら、ある意味では多数決による個性/障害の取捨選択が行われていることになりはすまいか。
そしてひとたび多数決的に知的障害のレッテルを貼られてしまいー誤解を恐れぬ表現をするならー社会から区別されてしまったら、腫れ物に触るような扱いを受けることになってしまうだろう。
そうして作られた知的障害者のパブリックイメージは、しかしながら人間であるところの当の知的障害者たちの実際とはかなり異なったものになる。この映画で描かれているのは人間である。
多くの人が彼らに貼り付けたがるイメージよりもはるかに多義的でふくらみのある、人間としての姿である。

この映画はフィンランドの映画。フィンランドに限らず北欧全般、社会福祉が非常に充実しているということで有名だ。そうした背景がこの映画にあるということを理解したうえで、出演する彼らのの心の叫びを聞いてみてほしい。

6月7日 (日) 17:00
6月16日 (火) 19:00

気狂いピエロの決斗の監督メガホンをとるースガラムルディの魔女ー

第67回ヴェネチア国際映画祭で監督賞と脚本賞を受賞した『気狂いピエロの決闘』などで知られるスペインの鬼才アレックス・デ・ラ・イグレシア監督が、魔女伝説が伝わるスペインの田舎町スガラムルディを舞台に人食い魔女と人間たちの壮絶な戦いを描いたホラーコメディ。

引用: eufilmdays.jp

気狂いピエロの決闘の監督アレックス・デ・ラ・イグレシアがメガホンをとった・・・・・・それだけで観に行く人は観に行くだろう。彼の名前にはそれだけの力がある。
世界中に熱狂的なファンを多く持つ彼の最新作は、またもや彼独自の奇想天外な、それでいて謎の説得力を持ったエネルギッシュな作品に仕上がっている。
観る人によって好き嫌いが物凄くはっきりと分かれる映画だろうが、クエンティタランティーノをさらにエクストリームにしたような、疾走感のある作品を撮り続ける鬼才の新作を映画館で観賞することには大きな意味があるはずだ。

5月31日 (日) 17:00
6月18日 (木) 15:00

明るく笑えるロックミュージカルー メイドインハンガリー ー

1960年代半ばの共産主義体制下のハンガリー。4年間のアメリカ生活を経て両親と帰国したミキは、反抗的な態度、派手な身なりとロックンロールで周囲の目を引く。当局に目をつけられた彼は、政府が企画したタレントショーに出場するが……。ロック歌手フェニュー・ミクローシュの半生を題材にした伝記的ミュージカル映画。

引用: eufilmdays.jp

時は60年代、ロックンロールがその産声をあげ、世界中の若者がそれに熱狂していた時代。共産主義政権下のハンガリーにおいてもその波は押し寄せていた。自由の国アメリカから帰ってきたの主人公は抑圧的で”おくれてる”ハンガリーの情勢に不満をもつが・・・・・・
等と書くとシリアスな映画のように聞こえるかもしれないが、本作は大人から子供まで明るく笑って楽しめる青春映画になっている。
アメリカ映画でも「わかってくれない大人」VS「それに抗う思春期の若者」の構図をとった映画はよく見かけるが、そこは共産主義政権下という、アメリカとは比べ物にならないほど不自由なハンガリーを舞台にしているだけあって一筋縄ではいかない作品になっている。

6月3日 (水) 18:30


独自の映像美で描かれる万人におすすめできるアニメ映画ーSong of the Sea ~海の歌ー

『ブレンダンとケルズの秘密』に続くトム・ムーア監督の力作。海ではアザラシ、陸では人間の女性の姿をとる妖精(セルキー)の母親と人間の父親の間に生まれた兄妹の大冒険。不思議な神話世界が見事な映像美で描かれる。

引用: eufilmdays.jp

アイルランド出身のアニメーション監督トム・ムーアは、まだあまり発達しているとは言えないアイルランドアニメ界を単身で引っ張っている開拓者だ。ケルトの伝承や文化を、万人に受け入れられるような可愛らしい絵柄を通して世界に発信し続けているこの監督の最新作は、またもや全編手書きのアニメーションによってつづられている。CGアニメ全盛の昨今において、アニメーションにはアニメーションにしかできないことがある、と訴え続ける彼の作品はまさしくスタジオジブリの継承者と呼ぶにふさわしいだろう。
もちろんスタジオジブリのみならず、日本のさまざまなアニメからの影響をうかがわせる彼の作品は、日本人の感性にもぴったりとフィットするはずだ。
シンプルで可愛らしいキャラクターが、透明感のある幻想的な世界を冒険する本映画は理屈抜きであらゆる層に推薦できる。

5月30日 (土) 11:00
6月2日 (火) 19:00

さいごに

今回紙幅の都合上紹介できなかった映画も、どれもおすすめの映画ばかりだ。
映画の内容ではなく、国で選んでみるというのもチョイスの仕方としてはありだと思う。
どの映画もその国の空気を巧みに切り取っているものばかりだから、まさに「映画でヨーロッパを旅している」気分になれること請け合いだ。
このイベントを機会に、日本では知られていないマイナーな国に関心を持っていただけたならアクセトリー編集部冥利に尽きるというものだ。

ただし注意されたいのは日本語字幕の有無。
我が内なる敵、ヴィザヴィ、候補者、連れ去られた子供たち、ザ・レッスン/授業の代償、ブルーベリーの味、に関しては英語字幕しかない。

イベントの詳細はこちらから

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編集部 三宅隆平

脳髄を置いてきぼりにして走る

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