カテゴリ: 大人の嗜みガイド

テーブルマナーが憂鬱にする食卓

貴族なんてものがいなくなって久しい昨今、厳格なテーブルマナーなんて求められても……と辟易している方もきっといるに違いない。確かにテーブルマナーを気にしすぎるあまり料理自体を楽しめなくなってしまっては本末転倒だとは思う。けれどもテーブルマナーというのは、一緒にいる相手、料理人や料理自体に対する気遣いともいえるものだから、まったくないがしろにはできないんじゃないか、とも思うのだ。
そこで今回はアクセトリー編集部が、より料理を楽しめるように、テーブルマナーの諸々について説明したい。もちろん単に箇条書きみたいにして説明するのもつまらない。したがって今回はテーブルマナーについて、その成り立ちや意味合いを説明し、土台をしっかりつくることで、納得してもらえるようにしたいと思う。
初回はフレンチをはじめとする洋食のテーブルマナーだ。

基本のキ 

まずは基本のキをおさらいしておこう。

・一皿食べ終えたらナイフとフォークは揃えて皿の上に置く、まだ食べ終えていなくて少し休憩したい場合はハの字に置く。
・ナプキンは膝の上に置き、口の汚れをふき取るのに使う。
・並べてあるナイフやフォークは外側から使う。
・ナイフやフォークを落とした際は自分で拾わずにギャルソンを呼んで拾ってもらう。
・パンはスープに浸さない(懐石料理で猫まんまをしないのと同様である)

最低限これだけ押さえておけば、盛大に恥をかくことはないだろう。つまらない箇条書きはこれで終わりだ。
次にテーブルマナーの成り立ちから、その根底にある思想とも呼びうるものを理解していきたい。

歴史からみるテーブルマナー

ヨーロッパにおけるテーブルマナーの歴史は、実はたいして古くない。古くないし、まともなテーブルマナーが成立するまで、たとえ王侯貴族であろうとも平気で手づかみし、護身用のナイフで肉を切り、食べ終われば満足げにゲップする、というような具合であったというから、相当にひどいものだったと思われる。
およそテーブルマナーと呼ばれうるものが生まれたのは十六世紀、ルネッサンスの真っただ中においてであった。人間性の回復が叫ばれたこの時代に、食べ方も野獣のようなそれから脱却しようと試みられたのは、当然のことのようにおもえる。また衛生観念が発達し、一つの皿から鷲掴みでものをとったりすることに対して忌避感情が生まれ始めたのもこの時期である。

フランスの宮廷にまともなテーブルマナーが導入されたのは、メディチ家のカトリーヌがフランス王家に嫁いでからのこと。当時ヨーロッパでもっとも文化的に栄えていたフィレンツェからやってきたカトリーヌが、様々な食文化とともにテーブルマナーをも持ち込んだのであった。

こうしたテーブルマナーは貴族社会が発達し、国家なるものの体裁が整うとともに次第に洗練されていった。貴族と平民の差異を際立たせるためのコードとなると同時に、一種の外交上の気遣いという意味合いをはらむようになったのであった。

汚れの忌避としてのテーブルマナー

とにかく汚くしないこと、あるいはそれが目につかないようにすること、これがテーブルマナーの基本となる部分である。上述したようにテーブルマナーは、動物的なものからの脱却のもとに成立してきた、いわば汚れへの忌避感のもとに成立してきたものなのであるから。
もちろん今では同席している人を不快にさせないように、かつ“おいしく”頂くための食事方法の基本としてテーブルマナーがある。

食卓や皿を汚さないようにする

よく知られたマナーとして挙げられるのが、骨のついた魚の食べ方だ。多くの場合魚は骨から外された状態で出てくるが、たまに背骨を残した魚が出てくることがある。そうしたときに魚をひっくり返してはいけない。というのもひっくり返したときにその衝撃でソースが飛び散る可能性があるからだ。ナイフとフォークで骨を外して食べるのが上品であり、無難である。

またメインの料理で肉が出てきた時、いっぺんに全部切り分けてはならないとされているのも、最後まで料理の美しさをキープし、皿を汚さないようにするためである。

ナプキンを膝に置くのも穢れを目につかないようにするため。膝に置くようにすれば、口元の汚れをナプキンで拭いてもナプキンの汚れは目につかなくなる。すこし席を離れる場合でも、ナプキンを食卓ではなく椅子におくようにしよう。

言うまでもないことだが、極力手は使わないでおきたい。ただ、骨付き肉や殻つきのエビなど、相当器用でないと手を使わざるを得ないような料理が出てくるときは、フィンガーボールと呼ばれる水の入ったボールが出てくるので、それに指を浸して汚れを落とそう。

極力手を使わないといっても例外はある。パンである。
パンの場合は、むしろナイフやフォークを使うのはマナー違反だ。食べやすい大きさにちぎって口に運ぼう。

音をたてないようにする

子供のころ、箸をドラムスティックに見立てて食器を叩いた経験のある方は多いと思う。それがマナー違反なのは言うまでもないことだが、ナイフやフォーク等の食器をガチャガチャいわせないことも大切なマナーだ。基本的にあまり音をたてないようにして食べることが好ましい。したがってスープを啜ったりくちゃくちゃ音を立てて食べるのも忌避されるべき事柄である。

外交上の気遣いとしてのテーブルマナー

テーブルマナーは汚れへの忌避であると同時に、外交上の気遣いでもある。ヨーロッパというのは文化や言語、風俗の異なる多数の国で成り立ってきたものであるから、外交交渉の晩餐においても相応の気遣いが求められた。

並べられたナイフやフォークを外側から使うようにする、というのはよく聞く話だ。
ではなぜ外側から使うように並べてあるのか。もちろんそちらのほうがとりやすい、というのもあるのだけれど、より重要なのは、上の画像のように、スプーンがナイフの外側にくるようにするためなのだと言われている。
ナイフが、刃物がスプーンの内側に来ることによって、相手に対して害意のないことを示せるのである。

テーブルマナーが成立する以前中世ヨーロッパでは、晩餐の場において些細なことで斬りあいに至ったケースが多かったのだという。そうした背景もあり、優雅で高度な貴族文化とともにテーブルマナーが発達した際、こうした気遣いも求められることになったのだろう。
同様に、ナイフを皿の上に置く際も刃のほうを相手に向けないように注意してほしい。例えば皿にナイフとフォークをハの字におく際は下の画像のようにナイフの背を外側にするようにしてほしい。

ナイフの刃を相手に向けておかない、なんてのはもはや「はさみは刃をもって渡しましょう」というようなものだし、そんなにかしこまる必要はない。

最後に

きれいに食事をすること、そして相手を気遣うこと。集約すればテーブルマナーはそれに尽きる。元はといえば、食事というかけがえのない時間を快適に過ごすためのコードなのだから。
ただ、なんども繰り返しているように、あまりにもテーブルマナーを意識するあまり料理を楽しめないようでは本末転倒だ。外交交渉で海外の皇族や閣僚と食事する、とかでもなければそこまで肩ひじ張る必要はない。

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編集部 三宅隆平

脳髄を置いてきぼりにして走る

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