カラフルな交差点から始まった、ポートランドのコミュニティ活動。

ポートランドはショップの並ぶストリートはよく紹介されているけれども、普通の住宅エリアはあまり知られていないと思う。実はそれぞれに個性的な地域や、散歩してみたくなるユニークな界隈がたくさんある。ポートランドではどんなコミュニティがあって、どういう暮らし方をしているのか、それが垣間見られるような活動を紹介しよう。20年前から地域環境の向上を支援している「シティ・リペア」というNPOだ。

交差点ペイントで、楽しくプレイス・メイキング。

Intersection Paint is one of the most famous Place Makings in Portland.

シティ・リペアの活動の中でも最も知られているのが「 インターセクション・リペア」。交差点の地面をペイントするプレイス・メイキング(人が居心地よく過ごせる空間や場所をつくる街づくりの方法)の一つだ。以前、彼らがリペアした交差点の近くに住んでいたことがあるが、派手な花の描かれた交差点にあずま屋やオブジェ的な物も設えてあり、正直言うとその雰囲気からヒッピー・コミュニティかなと思っていた。けれど暫く後になって、実はそれがポートランドでは有名な市民活動だと分ったのだ。

みんなの気持ちが集まって、ポートランドが変わっていく。

一見すると突飛なこの交差点ペイントには何の意味があるのだろう。シティ・リペアによると、住宅街には意外に人々が気軽に集まれる場所がなく、交差点というオープンスペースを活用できないかと考えたことが発端だった。公道をペイントするのだから、当然ながら実行する時には市当局との応酬もかなりあった。けれど結果として走る車がスピードを落とし、人々が集い、地域のムードが良くなるという実質的な効果があり、シティ・リペアはその活動を市に正式に認められた。そして今ではいくつもの交差点ペイントを企画し、地域の外からの参加者も呼んで人気のローカル・プロジェクトになっているのだ。

目に見えるインパクトが大きいのでシティリペアの活動は交差点ペイントのように紹介されがちだれど、スタッフが真っ先に語るのは自分たちは住民と行政とのブリッジだということ。そもそもプレイス・メイキングというものは現状や改善したい点をしっかり把握していなければ意味がない。本来はそれを考え、活動の主役になるのはそこに住む人達のはず。とはいえ、日本でもそうであるように無関心な人だって少なくはない。だからこの交差点プロジェクトは、ペイントという楽しく分りやすい行為を通して住む人自身にコミュニティ意識を持って貰う意味合いも大きいのだ。

ビール醸造所が支援するシティ・リペア。

シティ・リペアは毎年恒例の10日間のイベント「Village Building Convergence(まちづくりの集まり)」 を開催して地域について話し合い、ワークショップを開き、ローカル・ミュージシャンのライブなども含めたお祭りで盛り上がると同時に、実際のリペア・プロジェクトにも取りかかる。
たとえば今年の「Crafts & Drafts」と題したビール醸造所のある地区の交差点ペイント。長年ポートランドの老舗ブルワリーROGUEは地域コミュニティを支援をしてきて、このプロジェクトも自ら市に申請して許可を取ったという。写真の赤シャツの男性が当日のリーダー。シティ・リペアは経理担当以外は基本的にボランティアの人達で運営されている。

「Crafts & Drafts」の交差点ペイントのデザインはこれ。麦とホップ! 当日はビールが目的で来る人も多く、家族で参加できるストリートイベントとして催された。 地区内の小学生達もペイントに参加し、売上げの一部は小学校とシティ・リペアに寄付される仕組み。 こうしたプロジェクトを通して物理的な環境だけでなく、地域の人々が緊密になることでコミュニティの質を高め、トータルな環境が良好になっていく効果が期待できる。

ホームレスの人々のコミュニティもリペア。

今年のイベントでは道路だけではなく、ホームレスの人々が一緒に暮らすコミュニティの通路でもペイントが行われた。15年前にテント村だった所をサポーターの支援を得て合法的に「定住」することが認められた「Dignity Village」。ポートランドの60人の人々が暮らしているのだが、今回のリペアは7年前にペイントされた渦巻きのようなパターンを補修。ビレッジの住人に何の図柄なのかと聞いてみたが、「知らない」とのお答えだった。

交差点をポケットパークに変えるというのは、とても面白い発想だと思う。ただ、もし自宅がシティ・リペアの交差点の近くだったらどうだろう。市との取り決めでは、このプロジェクトは交差点に面している家の100%、同じ区画の80%の賛同を取り付けなければならない。私もきっと賛成すると思う。 ただ、「私にデザインさせてくれ!」とか言うかも知れない。ポートランドのシティリペアの特徴は明るくカラフルで図柄も割とプリミティブなのだが、もしシックな家に住んでいたら少し違う感じのペイントにしたいと思うかも。その辺をどう調整しているのか分らないが、今のところポートランド市内にはシティリペアによるハデな交差点が既に何十カ所もあり、住民にしっかり支持されているのだ。

(文・写真:百木 俊乃 ポートランドの暮らしブログ365Portland.com編集人。コピーライター、クリエイティブ・プロデューサー。日本とポートランドをつなぐプロジェクトの企画プロデュースを行っている)

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