クラフトビールから見えてくる、ポートランドという自由。

「世界のBESTビール都市」第一位に選ばれている ポートランド。クラフトビールは、ポートランド文化の一つの象徴。ビールを通して見えてくるこの街のあり方を探ってみよう。

ポートランドが、世界一のビール都市になった理由。

写真:筆者が最も好きなブルワリーの一つBreakesideのタップルーム。工場のカウンターで出来立てビールを飲む幸せ!

初めてポートランドに来てビールハウスに行くと、その種類の多さに戸惑ってしまうかも知れない。ローカルタップのサーバーがずらりと並んでいる光景は圧巻。さらにブルワリーもタップルームを併設していて、当然レストランやバーもローカルビールを揃えている。バドを置いてない店は多いけれど、クラフトビールのない店はない! そして今やスーパーマーケットに持ち帰り用のタップがあり、100種類くらいの瓶ビールが棚を占領しているのだ。
何しろ「世界のBESTビール都市」第一位に輝くポートランド (Beer Connoisseur誌) 。市内に59カ所、広域のメトロ圏まで含めると85の醸造所があり、そのほとんどがマイクロ・ブルワリー、つまり小さな醸造所だ。
一体、なぜポートランドはそんなクラフトビール王国になったのだろうか。そこにはいくつかの理由がある。

ハンドクラフト文化は、ポートランドらしさの象徴。

写真:オーガニックのビールHop Works。9種類のサンプラー。

ポートランドはハンドクラフトの盛んな街。手工芸から家の改装など大掛かりなDIYまで幅広く、誰もが気軽にモノづくりに取組む。モノとは限らない。ローカルミュージシャンやアーティストも手づくり感に溢れる活動をしている人が多い。それは企業文化も同じ。有名なブランド・エンタープライズもあるけれど、そういうのはあまりポートランド的ではない。小規模でクリエイターが楽しみながら趣味のようにやっている会社がこの街の活力と風土を生み出していて、みんなそれがポートランドらしいと思っている。クラフトビールのマイクロ・ブルワリーはそういう土壌があって育ってきた。そして彼らもまたハンドクラフトで美味しいビールを提供することが、やっぱりポートランドらしいと考えているのだ。

地産地消がキーワード。ローカリティを大切にする。

写真:IPA(インディア・ペールエール)専門のGigantic Brewing。工場地帯にぽつんとあるのに人がいっぱい。

ポートランド・メトロ圏の周囲は農地とファーム、深い自然に囲まれていて、都市でありながら農産物が豊富な環境がある。だから麦やホップ、水など、良い素材が手に入るというアドバンテージはある。だが、それより大きいのはポートランドの人々がローカルの農産物やフード・プロダクツに深い愛着を持っていることだろう。たとえば地産地消をコンセプトに、コミュニティへの貢献で知られるNew Seasonsというスーパーマーケットがあるのだが、安全で美味しいだけでなく、消費者は彼らのビジネスが自分たちの暮らしにいい形で還ってくることを知っているから多少値が張っても強く支持している。

ビールの場合は、ポートランドのあるオレゴン州で生産されたビールの60%が州内で飲まれているというから驚かされる。人々はローカルビールを応援している。だから、ただ造るだけでなく地元に愛されることが、この街のクラフトビールの「生き甲斐」でもあるのだ。

自由な風土と人々の生き方、ポートランドの感性。

写真:月替わりのテーマでビールを提供するHawthorne Taphouse。

どこの街でもビール造りには生産量や税金など法律やルールが付き物だけど、ポートランドではブルワー達が結束することで規制を緩和させ、その後はマイクロ・ブルワリーが参入しやすくなっていった。でも、環境だけで文化はつくられない。ポートランドでビールを楽しんでいる人達を見て気付くのは、男女比は半々、年齢層もすごく幅広いこと。クラフトビールを心地よい時間を過ごすための気楽な「相棒」のように捉えている。ポートランダーは自分の好きなモノごとにはこだわるが、人の好みは気にしない。でも尊重はする。それは気質というより生き方のポリシーだと思う。

写真:ポートランドDigital Pour社のダッシュボードのデモ。今あるビールの特徴と残量が分りやすく表示される。日本にも導入され始めた。

多様なビールが受け入れられ、誰でも自由な飲み方ができる風通しの良さは、こういう人々がいて生まれている。それがマイクロ・ブルワリーのチャレンジ精神に声援を送り、新たなクラフトビール造りを歓迎する風土をつくってきたのだ。美味しいビールを生み出す造り手の努力だけでなく、飲み手も一緒になって育てていく、それがポートランドのクラフトビール文化なのである。

日本でも美味しいクラフトビールが飲めるようになり、ファンも増えている。様々な種類が出回ることでビールの世界が広がっていると思う。好きなビールを育てるつもりで付き合っていくのも、また楽しい飲み方ではないだろうか。
(文・写真:百木 俊乃 ポートランドの暮らしブログ365Portland.com編集人。コピーライター、クリエイティブ・プロデューサー。日本とポートランドをつなぐプロジェクトの企画プロデュースを行っている)

写真:外で飲まなかった日は、買って帰ろう。スーパーのビール売り場はすごく充実している。突き当たりのクーラーもすべてビール。あまりに多過ぎて選べないかも・・・

1 個のコメント

  • […] 衛生面が徹底的に管理された日本のビール工場とは違い、道路わきの倉庫のような場所、風も虫も自由に出入りができてしまう自宅のガレージのような環境で生産されているにもかかわらず、幅広い年代の人にビールは親しまれています。地元住民にとってポートランドのクラフトビールは心地よい時間を共にするための「相棒」になっているようです。 […]

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