海の底から目覚めしワイン―海底熟成ワインに迫る―

地球上およそ7割を占める海。その豊かな自然は時として人間に牙を剥きながらも、様々な恩恵を与えてきた。 不運にもその海底に眠ってしまった数多の船には、金銀財宝の他にも眠っていたものがある。それは、ワインだ。 海に沈んでたワイン?そんなものが果たして飲めるのだろうか。 奇しくも海底が、天然のワインセラーと化した事例も確かに存在するという。 今回はそんな海底ワインの謎に迫る話をご紹介しよう。

人とワインと海底の関係

世界中を席巻するニュースの一つにワインのニュースがある。産地はもちろんのこと、値段も高級品から廉価なものまで、様々なラインナップを揃えているその嗜好品は、世界中の人の「舌」が興味を持っていると言っても過言ではない。
その中でも一際世間の注目を浴びるものの中に、海底から偶然発見されるワインがある。

バミューダ海で発見されたワインは、劣悪な保存状況であったためか失笑のネタとなった。
米国の食品フェスティバルでお披露目した際は、ほとんど海水のようで、ガソリンや酢の味もしたのだとか。
ずっと海水中に晒されていたのだから、コルクを介して海水が入り込んでも仕方がない。
やはり海底に沈んでいたワインなんてこんなものなのだろうか……。

Photo by Mirror

まさに絵筆をすすいだ後のバケツの水。小学生の図工の時間を思い出す。
人は本能的にも、常識的にも、これが飲み物でないことを察するハズだ。

ソムリエの皆さん、どうして飲んじゃったの……。

けれど、そんな笑い話もあれば、奇跡のような話も存在する。
動画になってしまうが一見の価値アリ。

バルト海に沈んでいたヴーヴ・クリコ(上の動画のワイン)やエドシック・モノポールはその保存状態が良かったようで、絶品だ!とまでは言えないものの、まろやかな味わいのワインを堪能することが出来たという。
言葉こそ皆に共有し後世に残せるが、味覚に関しては同じものを口にしなければ共有することが出来ない。100年以上前に作られたワイン。その味わいの一端を感じることが出来るという奇跡に、ロマンが感じられないワイン好きはごく少数だろう。
このような発見は、海底に沈むワインの魅力を世界に知らしめる結果となった。

どんな違いが成否を分けたかは分からないが、後者のように海底に沈んだワインも飲むことが出来るケースがあるらしい。
けれどそのロマンの一端に触れられるのは、セレブか、世界的なワインの権威のみであろう。
我々一般市民には夢のまた夢……。

と思いきや、アクセトリーワイン好き党(仮称)の諸君に朗報がある。
伝説のワインとまではいかないものの、海底に眠るワインがどんなものか楽しむことが出来る取り組みが実際にあるようだ。

海底であえて熟成させるプロジェクト―海に眠るワインはもっと身近に―

実は今や海底は、ワインを熟成させる一つの場所として注目されており、いくつかの企業が研究を重ね取り組んでいる。
その中で、日本で作られているのが海底熟成ワイン「サブリナ」。
飲めば、南アフリカで育てられたシラーの力強い味わいが少しまろやかになっているという。
シラー特有の味を知っていればそのスパイシーでビターな風味の角が丸くなっていることに気が付くだろうが、同じ品種を初めて飲む場合はその個性に驚くかもしれない。
どちらかと言えば品種を知っている人向けのワインだろう。
値段は10000円からと決して安くはない値段なので、手を出す方は慎重に。

Photo by 楽天市場

表面に付着しているのは砂ではなく、海底で熟成していた際に付いた藻だという。

青いボトルに小さな花びらを思わせる白やピンク。ボトルを支持材として自然によって描かれるそれは世界に二つとない芸術だ。

興味を持たれた方は是非トライしてほしい。

ロマンが現実になるということ

ほんの些細な運命のイタズラで、人々は多くの発見をしてきた。
発酵食品はその最たる例で、「酒」もまたそのひとつである。

発酵という概念を発見した人間は、技術と工夫によって偶然を必然へと変えた。
そう考えると世にも珍しいこの取り組みも、人間の歴史の流れにおいては至極当たり前のことをやっているだけなのかもしれない。

海底で熟成されたワインを口にしながら、その珍かなる境遇と、歴史の流れについて一考深めてみるというのも興がある。
決して沈没船から発見された訳ではないけれど、人々の夢と憧れを形にしたその酒には、それ相応のロマンがある。

人が夢を抱けば、同じ夢を共有した誰かがそれを実現してくれる、この世界。
自分がいつかその夢をかなえる側になりたいと願う行為は、いささか大仰だろうか。

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