カテゴリ: 大人の嗜みガイド

これまでの価値観をひっくり返す住まい、タイニーハウス。

あなたは今の住まいに満足しているだろうか。設備の良さやスペックではなくて、自分がいいなと思える空間で暮らすことが幸せだと思う。しかし、その「自分らしい家」というのがなかなか難しい。それはポートランドでも同じ。全米で最も住みたい都市に必ずランクインする人気都市でもあるので、住宅価格は賃貸も含め上がる一方。おまけにアメリカの家の平均面積は約250㎡(日本の2倍)、友人カップルが家探しをしていた時に「2寝室しかない物件は問題外」と言っていたのが印象的だった。大きくて当り前の国で、タイニーハウスは床面積10〜40㎡というごく小さな家。まさにこれまでのアメリカの価値観をひっくり返す住まいと言えるかも知れない。

そもそもタイニーハウスとは何なのだろう。

タイニーハウスにはキャンピング・トレイラー型(ホイール付きで牽引できるタイプ)と、普通の家のような固定型がある。ポートランドではタイニーハウスのパイオニア的存在のディー・ウィリアムズが積極的にDIY指導をしつつ、そのコンセプトを広めてきた。それは従来のバカでっかい家でエネルギーを使い、近所の人と接触のない暮らし方に疑問をもった人々に支持されてきた。
一方、私たち日本人は小さな家の暮らしにあまり違和感がないのでは。 かつて「ウサギ小屋」などの揶揄もあったが、 だだっ広い家よりこじんまりした住まいが好きな人も多いだろうし、タイニーハウスの考え方もすんなりなじむように思う。

実際にタイニーハウスで暮らすには。

写真:リナのスパイス・ラック。小さな家は収納の仕方にも工夫を凝らす。

タイニーハウスを造ってみたい、住んでみたい。だけど、どこにどうやって? 技術的なハードルだけでなく、設置する土地をはじめ、電気・上下水道などのインフラがなければ現実の家としては成り立たない。住まいはモノとしての家だけでは完結しない訳で、法律や地域のルールもあるだろう (※)。そのあたりを解決する一つの方法として、居室だけのタイニーハウスが集まって暮らすコ・ハウジング的なかたちが生まれている。浴室・台所・ランドリーなどは母屋となるコモンハウスで共有し、さらに集会室などのスペースも設けて、それを中心にしたコミュニティにする形態だ。

※ポートランドの場合、自分の敷地に離れのような形で固定型タイニーハウスを設置する場合はADU(Accessory Dwelling Unit)と呼ばれるカテゴリとなり、母屋から上下水道を引くこともできるし、他都市に比べて許可を得るのも簡単。

集まって、シェアする暮らしが始まった。

写真:タイニーハウス・ビレッジ「Simply Home Community」のトニー。屋根は片流れの方が施工が簡単、壁材は縦貼りにすべきだったと、具体的な反省点も教えてくれた。

ポートランドに昨秋スタートした「Simply Home Community」は、4軒のトレーラー型タイニーハウス+コモンハウスに3住人の計7人のビレッジ。個性的なハウスはそれぞれ自身のDIYによるもので、各戸とも簡易なキッチン・トイレ・シャワーを備えているが、コモンハウスも利用できる半独立型。住人のトニーは他の人のハウス造りを手伝って経験を積み、仲間と助け合いながら自分の家も建てたという。

写真:トニーのキッチンはコンパクトながらとても充実している。日本製の壁付け換気扇は静かでベストだそう。

写真:庭にはラスティックなガゼボが。中にはファイヤーピットが設けられている。

Simply Home Communityの場合は最初にコモンハウスとなる普通の住宅物件を探すところから始め、その庭にタイニーハウスを設置している。そのせいかプライベート感があって住人同士が家族のような感じ。庭ではみんなで畑をつくり、度々コモンハウスで一緒にご飯を食べるなどコミューン的な雰囲気もある。また、アメリカの場合は昔からRVやモーターホームが一般的なので、トレーラー型の家に違和感が少ないという背景もある。

小さな家をコミュニティとして育てていく。

今、ポートランドには大規模なタイニーハウス・コミュニティの計画がある。それはNPO「Micro Community Concept」による25戸のプロジェクト、年収180万円以下の人を対象にした賃貸で、想定家賃は3万円程度。このタイニーハウスは固定型で、ポートランドのTechdwell社のマクロホーム(狭小住宅)Axiaを採用する。建築費は1棟約150万円。トレーラー型ビレッジは認可が微妙なのに対し、こちらは住宅プロジェクトとして市の同意を取り付けている。ポートランドは人気都市になるにつれてジェントリフィケーションの問題(地域の高級化。家賃の値上がりよって、これまでの住民が追いやられる状態を生む)が加速している。タイニーハウス・コミュニティは手軽な住宅が求められている現状に見合っているし、こうした動きが盛り上がっていく可能性があるだろう。

タイニーハウスが将来の住まい方を変える流れになるかはまだ分らない。でも、小さな家のコミュニティ化はポートランドに限らず日本でも参考になりそうだ。一軒家でもなければ、マンションでもシェアハウスでもなく、新しい集合住宅のかたちとなるかも知れない。独立性を保ちながら共有する暮らしは学生や高齢者などの一人暮らしだけでなく、ケアハウスのような施設も考えらる。日本人はコンパクトに住むことが上手だし、現代はあまり密でない緩やかなコミュニティが居心地いい気がするのだが、どうだろう。

(文・写真:百木 俊乃 ポートランドの暮らしブログ365Portland.com編集人。コピーライター、クリエイティブ・プロデューサー。日本とポートランドをつなぐプロジェクトの企画プロデュースを行っている)

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