ダイブバーに飛び込みたい、ポートランドで酒場放浪。

ヒップでクールな街として注目され、ポートランドにツーリストが押し寄せるようになった昨今。ガイドブックには数々のスタイリッシュなバーやレストランが、いかにもポートランドを代表するような顔で掲載されている。が、しかし、地元の人々は決してそんな店にばかり行っている訳もない。ポートランダーの憩いの場としてのバーを覗いてみたい。

ネイバーフッドで一杯。ポートランドの夜は更けゆく。

「The Bitter End」 ライブもあって頑張ってきたけど、ついに閉店。ビターエンドとは「最後の最後」の意。

日本でバーと言えばどんなイメージだろう。礼儀正しいバーテンダーが蝶ネクタイでシェーカーを振っている正統派バー、カジュアルなショットバー、食事のできるダイニングバー。しかし、こうした分類はポートランドでは異なっている。バーとは何ぞやという「そもそも論」ではなく、あくまで私見によるポートランドの実態とご理解頂きたいのだが、ワインバーのように特化した店は別にすれば、 大雑把には次のどれかだと思う。クラシック、パブ、そしてダイブだ。まず、クラシックは説明の必要はないと思うので飛ばします。

典型的なクラシックバーは艶のあるカウンターにスポット照明。酒瓶をライトアップしている所も多い。

バーは22歳以上、パブはご家族でどうぞ(ほぼ)。

パブは日本とはちょっと認識が違う。もちろんパブはイギリス発祥で、日本では英国風の店を差すと思う。だが、ポートランドでパブといえば店のタイプは様々で、でも大抵ちゃんと食事もできるバーのこと。そして、ほぼファミリー・フレンドリー、つまりお子様も入れる。通常、酒場は未成年者(オレゴン州では21歳以下 )は入店できない。「No Minors」の看板が掛かっていてID(身分証明書)を求められることもある。パブはレストランを兼ねていて、親が自分が飲みたさに家族を連れて来ていることもよくある。

「Dante’s」 ポートランドのミュージックバーが次々潰れる中で気を吐く。左にNo Minorsの看板が見える。

地元住民がのんびり飲むのはこんな店。

そして、ダイブ。実は今回この話をしたかったのだ。ご存知のようにダイブとは飛び込みや潜水のことで、ちょっといかがわしくて不良な感じの表現。と言ってもダイブバーがみな怪しげな店かと言えばそんなことはまったくない。むしろテレビで野球中継をやっている近所の一杯飲屋という感じの所が大半だ。だからネイバーフッド・バーと呼ばれることもある。スポーツ中継を流している所はスポーツバーとも言うが、それもほとんどダイブバーのカテゴリ。

「Clinton Street Pub」 パブという名だが、まさにネイバーフッドバーという趣き。近所に一軒欲しい!

ダイブバーがどんなふうかと言えば、ダークな店内にカウンターと大きなTVモニターがあって、隅っこにビリヤード台や大昔の曲が入ったジュークボックスが置いてある。そしてビリヤードかピンポン台。 つまりはアメリカ映画に出てくる典型的なバーのスタイルだ。

「Underdogs」 ガス・ヴァン・サントの映画「ドラッグストア・カウボーイ」のロケ場所跡地。店名は「負け犬」の意。

ポートランドのダイブバーに他の街と違う点があるとしたら、カウンターの向こうのビールタップにクラフトビールがあること。普通、こうしたバーで人気のあるビールが何かご存知だろうか。バド? いやー、それはオジさんの感覚。断然、PBR(Pabst Blue Ribbon)だ。どちらにしても軽くて安いビールだけど。PBRはハッピーアワーなら2ドルくらいと激安だから若者にもすごく人気がある。しかし、それでもポートランドでローカルクラフトのないバーはありえない。

「Commodore」 毎朝7時から夜中まで営業。クラフトビールは普通パイントグラス(473ml)で出てくる。

ダイブバーで知るポートランドの街、そして人々。

ポートランドに行ったら、ぜひダイブバーを覗いてみたい。恐らくガイドブックには出ていない街や暮らしを垣間見ることができる。注文の仕方がよく分らなければ、タップの前に行って適当に指差せばいい。どんなビールが出てくるかも楽しみだ。もちろんウィスキーやスピリッツ類も一通り揃っているし、カクテルもある。ただ、ダイブバーの主流はウェルドリンクなので、あまり通なブランドなどを言わない方がいいだろう。ウェルドリンクとは銘柄を指定しない飲み物。たとえばジン・トニックとかウィスキー・ソーダなどを注文する時、ブランドはお任せでいいというものだ(つまり安い酒になる)。

「21st Ave. Bar」 紆余曲折で16年。裏庭に何と日本庭園がある。

バーにもバーフードと呼ばれる軽食やおつまみはある。フレンチフライズ(フライドポテトとは呼ばない)、バッファロー・ウィングス(手羽のピリ辛揚げ)、ナッチョ、スライダー(ミニサイズのハンバーガー)あたりが定番。

「Kenton Station」 古い街角の昔ながら店。レトロ感で若者にも人気。食事のできるレストランを併設している。

こういう店が紹介されているガイドブックはほとんどない。だが、ダイブバーには今のポートランドのリアルな側面がよく現れている。自分の街が人気になってヨソ者が溢れている状況に戸惑い、どこか居心地の悪い思いをしている地元民の想いが感じられる。当り前だが、ポートランダーがみんなクールな店を求めている訳ではないのだ。しかし洒落た店が増えるに連れて、ダイブバーはどんどん消えつつある。気楽に一杯飲める店が近所にあるのっていいと思う。ダイブバーはどの街にも必要だし、なくならないで欲しい。

ダイブバーにはやっぱりこの丸椅子!

(文・写真:百木 俊乃 ポートランドの暮らしブログ365Portland.com編集人。コピーライター、クリエイティブ・プロデューサー。日本とポートランドをつなぐプロジェクトの企画プロデュースを行っている)

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