カテゴリ: 大人の嗜みガイド

この曲をご存じだろうか。



夏の暑いとき聴きたくなるような、涼しげな曲調。コード進行やリズムがそこはかとなくラテンを感じさせるおしゃれな曲。そう、ご存じボサノバだ。

そもそもボサノバとは?

ボサノバは、ブラジルで現地の音楽とジャズなどの西洋音楽が混ざり合って生まれた音楽。指弾きのナイロンギターが作るビートと、8ビートのハイハットにサンバキックといった独特のパーカッション。それにすこしゆるいメロディのふんわりとした歌が乗り、和やかでおしゃれな雰囲気を醸し出す。
日本だとおしゃれなカフェや雑貨店で流れていることが多く、市民権を得ているのではないかと思う。

ボサノバの歴史

ボサノバは新しい音楽だ。歴史は60年ほど。
1950年代中ごろに、リオデジャネイロ在住の中流階級の裕福な若者、ジョアン・ジルベルト、アントニオ・カルロス・ジョビンらによって新しいタイプの音楽が作られ、「新しい傾向」といった意味のボサノヴァと名付けられた。
その後、「イパネマの娘」や「おいしい水」などのアメリカ国内でのヒットによって、ボサノバはアメリカで空前の大ブームとなる。(余談だが、Agua de Beber: Drinking Water/Water to drinkの訳が、おいしい水、というのはいかがなものか。おいしい水って・・・。)
英詞でのカバーやボサノバを模倣した音楽も多く現れ、ある種のオリエンタリズムとともに全米に広がる。
1960年代以降のジャズで、ボサノバの影響を全く受けてないものなんてないと言えるほどだ。

しかし、このブームは本国ブラジルではなくアメリカで起こったもの。1964年3月に、ブラジルで軍部によるクーデターが起きたため、中流階級の音楽であったボサノバは弾圧されてしまうのである。

実は、ボサノバはブラジルではあまり聞かれない。もともと中流階級以上が聴く音楽だったから、労働階級まで浸透しなかったのだ。もちろん、中流階級に対する社会的な反抗心もあっただろう。
まだまだ階級社会であるブラジルでは、中・上流階級の年配の人が聴くことが多く、若者は全く聴かないジャンルとなっている。
皮肉なことに、生まれた地ブラジルよりも、日本のほうが音源を入手しやすいのだ。

ボサノバの名曲、スタンダードナンバー

イパネマの娘/アストラッド・ジルベルト


冒頭にも載せた曲。世界的に有名なイパネマの娘を、ボサノバの創始者、ジョアン・ジルベルトの(最初の)妻、アストラッド・ジルベルトが歌ったもの。このバージョンは1965年に96連続チャートインという記録を打ち立てる。日本のカフェで一番頻繁に耳にするのはこれじゃないかな、と思う。この曲に関しては、アメリカの商業主義にボサノバが利用された例としてボサノバファンに批判されることもあるが、とても良いバージョンであることは間違いない。
アストラッドの穏やかな歌声が曲の雰囲気にマッチして、緩やかな雰囲気を醸し出す。
ちなみに、イパネマの娘は世界で二番目に多くの人にカバーされた曲だそうだ。(1位はthe BeatlesのYesterday)

Desafinado( Slightly out of tune)/Nova




Desafinado(英訳はSlightly Out of Tune)はジョビンの作曲。様々な人がカバーしているが、おすすめはこのNovaがカバーしたもの。彼らは2010年ごろに活動を開始した比較的新しいグループだが、youtubeなどでかなりの高評価を得ている要チェックのボサノババンド。ほかにもwaveやagua de beberなどのコピーもyoutubeで聴くことができる。

この曲のタイトル"Desafinado"は「音痴」という意味で、うまくいかない恋をピッチの合わない音楽に例えている。
ボサノバ、という言葉が初めて曲の中に出ている曲でもある。この曲の中で、「これがボサノバなんだ」とうたわれたことによって、ボサノバという名称が定着していくこととなる。
ちなみにこの曲,英語の歌詞が‘Love is like a never ending melody’で始まるものと、‘If you say my singing is off-key, my love’で始まるものの二種類ある。後者のほうがポルトガル語の歌詞に近いらしいが、個人的には前者のほうがぐっとくる。気になった方はぜひ調べてみてほしい。

Chega de saudade (想いあふれて)/ジョアン・ジルベルト



そして最後に外せないのは、「想いあふれて」という邦題で知られる、Chega de saudade。これはジルベルトがジョビンとタッグを組んで生まれた、最初のボサノバ曲と呼ばれるもの。今でこそ耳慣れてしまったが、当時はとてもセンセーショナルな曲として受け止められたようだ。
ジルベルトとジョビンが苦悩の末書き上げたこの曲があってこそ、今のボサノバがある。そう思うと、感慨深いものがある。

実はボサノバと呼ばれる曲の数はそれほど多くない。もともとブラジルでジャズとサンバの融合として生まれたボサノバは、アメリカにわたりジャズと混ざり合っていく。また、ジャズ同様、一つの曲がいろんな人にアレンジ・カバーされて広まっていったため、同じ曲にもさまざまなバージョンがある。小野リサや中村義郎など、日本人の有名なボサノバアーティストもいる。かなり良いカバーを出しているので、ぜひ調べてみてほしい。

カクテルも!

ちなみに、ボサノバ(Bossa Nova)というカクテルがある。
ダークラム30ml、ガリアーノ30ml、アプリコットブランデー15mlに、パイナップルジュースを注いで。
何とも南国風で、夏場にビーチで飲みたいカクテルだ。
カクテルの材料を見ても、ボサノバのイメージが伝わってくるような、そんな感じ。

バーで飲むのもいいが、風が感じられるようなところで飲みたい。

おわりに

昔、アメリカのホステルでブラジル人と仲良くなった。彼に、「ブラジルの音楽は素晴らしい、特にカルロスジョビンは天才だ」と話したところ、「なんでそんな昔の、誰も知らないアーティストを知っているんだ」と驚かれたことがある。
当時筆者は、日本人の私ですら知っているのだから、ブラジルではスーパースターなんだろうなあなどと考えていたので、ひどくショックを受けた。

日本人はミーハーで、背景を理解せずにいろんな文化を手当たり次第取り込んでいるという批判がある。しかし、文化そのものを否定することなく取り込んでいくのは、実は意外と難しくて素晴らしいことなのではないかと思う。
たとえ、「カフェに流れているおしゃれな音楽」という認識でも、日本でボサノバが簡単に聴けるというのは、喜ばしいことだと私は思うのだ。

欲を言えば、この記事を読んでくれた方がたまにでも、カフェやバーで流れているボサノバの曲に意識して耳を傾けてくれたらいいな、と思う。
背景を知ると、ちょっとだけ音楽が楽しくなる。その一助になれたらいいなと思うのである。

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