カテゴリ: カクテル・その他

モヒート、その高まり続ける人気

モヒートという名前をここ数年よく耳にするようになった。ラムをベースにしたキューバ発祥のこのカクテルは、毎年夏になると、日本人のカリブへの憧れとあいまって非常によく飲まれている。
その流行はとどまるところを知らず、さまざまなアレンジレシピが作られ、中にはトマトジュースを使ったモヒートなんてものすらあるようだ。

だがそうしたアレンジレシピはともかくとして、いわゆる正統派のモヒートでさえも、日本のそれと本場キューバのそれでは全然味わいが違う。
なぜなのか。

理由1 -本場ではミントを入れない

モヒートというと、なんといってもその特徴は、鼻孔を通り抜けるミントの華やかで清涼感のある香りだ。
あのミントの香りが好きでモヒートを飲むという人も多い。

ところがなんと、本国キューバではモヒートにペパーミントだとかスペアミントだとかいった、いわゆる“ミント”は使わないのだ。

本場のバーテンダーたちが使うのはイエルバ・ブエナというハーブ。
このイエルバ・ビエナは、良い草、という意味のスペイン語で、学名はMentha Nemorosa。
一応ミントの一種ではあるのだが、ミントという植物自体の定義があいまいで、一概にどうともいえないらしい。

実際にそれで作ったモヒートを飲んでみると、普通のミントで作ったものにくらべて、自然な荒々しさ、野生味があり、よりキューバらしい個性的な味わいになっているのがわかる。

とはいえキューバ流のイエルバ・ブエナを日本で味わうのは困難。ラムに特化したバーに行くか、自宅で栽培するしかない。
味の近さと入手のしやすさを考えると自宅で作る際には「スペアミント」がおすすめだが、(ペパーミントよりはスペアミント)できれば一度はイエルバ・ブエナを使用したモヒートを飲んでいただきたい。


理由2 -バカルディを使わない

バカルディは世界最大のラムメーカーだ。
最近では缶入りのバカルディカクテルも人気で、日本での知名度は極めて高い。
モヒートときくと、あのバカルディのコウモリのロゴを思い浮かべる方もおおいのではないだろうか?

ところが本場キューバでは、ほとんどバカルディは飲まれていないのである。

なぜか。
それはバカルディがキューバのラムではないからだ。
もともとはキューバを代表するラムメーカーだったのだが、革命を期にキューバから撤退、英国領ハミルトンへと社を移し、その結果キューバでは売ることができなくなってしまったのである。(革命によってキューバが社会主義化したため)
そして今や、その販売・ターゲティングの主軸はアメリカにある。(その結果、バカルディはアメリカで最も売れているスピリッツになった。イメージ戦略でも大成功を収めた。)

もちろん、僕もバカルディが優れたラムであるということは認める。
でも折角、モヒートというキューバ由来のカクテルを嗜むのであれば、純キューバ的なラムで作ったそれにこだわりたいものだ。

ハバナクラブ -正統派キューバンラム

バカルディがキューバのラムではないことは前述したとおりだ。
とはいえなかなか日本では純キューバ産のラムを手に入れることは難しい。
その多くが入手困難だし、あってもモヒートにして飲むには高すぎるからだ。

高すぎない純キューバ産というところで名前が挙げられるのが、かの有名なハバナクラブのラム。
ホセ・アレチャバラが1878年に設立した同社のラムは、本国キューバでは八割のシェアを獲得しているという。

実際に飲んでみると、ハバナクラブで作ったモヒートのほうがよりラムらしいふくよかさを持っているような印象を受ける。バカルディに比べるとより個性的で複雑な、悪く言えば好みを選ぶ味わいになっているのである。
おすすめはハバナクラブ三年熟成。値段と味のバランスがとれており、カクテルベースにするにはちょうどいい。
ストレートで飲むには少々アルコール臭い(雑味が多くとんがっている)。

このハバナクラブ、実はキューバ革命の時にカストロ政権によって国有化されているという過去がある。
革命による国有化によって、創業者一族がアメリカに移住し、そこで「ハバナクラブ」の商標を登録、さらにその商標をバカルディが買ったため、キューバ本国のハバナクラブと、バカルディが商標を使用しているハバナクラブの、二種類のハバナクラブがあるというとんでもなくややこしいことになっているのである。(キューバとアメリカのややこしい関係もそれを助長している。)
バカルディがバハマ(キューバの隣の島)製のラムをハバナ(キューバの首都)クラブとして売り出そうとして、キューバ本国のハバナクラブと対立しているというのだから、話はさらにややこしい。
とはいえ日本で買えるものはキューバ本国のお墨付き品である。
安心してキューバンラムを楽しんでほしい。

筆者としてはバカルディのハバナクラブにも興味がないではないのだが。

好みはあるだろうけれど……

もちろん好みは人それぞれだし、そもそもカクテルなんてバーテンダーによって味が違うのだから、これといった正解はないのかもしれない。
これを読んで、あなたが実際にキューバスタイルのモヒートを飲んでくれたのだとしても、それがあなたの舌に合うという保証はどこにもないのだ。

しかしモヒートの故郷であるキューバで、それがどのように作られ、どのように飲まれているのかを知ることには大きな意味がある。一種の基準、ベンチマークとして、あなたが他のモヒートを飲むときにより楽しく飲めるんじゃないかな、と思う。

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編集部 三宅隆平

脳髄を置いてきぼりにして走る

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