カテゴリ: ウイスキー

ウイスキーの世界、生涯続く世界

今回紹介するのはスコッチ・ウイスキーの更なる楽しみ方、嗜み方である。
ブレンデッドやシングルモルトのそれを飲むようになってまだ日の浅い酒飲みよ、静かに、淑やかに、盃を交わそう。

ほんの数年前のことだが、とある秋の宵、バーで同席した老成の紳士がこう言っていた。

「自分好みのウイスキーを見つけることは、生涯の伴侶を見つけるのよりも難しいもんだよ。」

ポツリと出てきた言葉と、しわがれた左の手に光る銀の指輪をしていたことがとても印象的で、その時のシーンだけは今でも鮮明に思い出すことが出来る。
当の私は、かねてからの好奇心からシングルモルトのスコッチに手を出しドハマりしていた時期で、彼の呟いたその言葉は私にことさら特別な意味を与えた。

それからというもの、酒屋や大きな食料品売り場などでも手に入るようなオフィシャルのボトルを飲みながらも、ボトラーズと呼ばれる、やや値段の張るもののオフィシャルのボトルとは異なった味わいのスコッチにも手を出すようになった。

人によってはそういった領域に早くから手を出すことをこころよく思わない方もいるであろうが、

その紳士との出会いが、にわかだてらに、自らの生涯の出会いとやらを探すきっかけとなってしまった。

それから数年を経て、(と言っても2、3年で今でも酒飲みから言わせればペーペーではあるのだが)
オフィシャルの、現行手に入りやすいスコッチであればある程度飲み歩いたな、と自負できるようになったこともあり、少しは人にスコッチの美味しさをおススメできるようにはなってきた。

これからスコッチを始める貴方、深めようとしている貴方、少し耳を傾けてみては如何だろう。

けれど美味しいウイスキーは、大量生産では作れない。

ひねくれたタイトルの真意はここにある。
美味しいウイスキー。特にシングルモルトのそれは、品の無い無遠慮な飲みをするべきではないし、これから足を踏み入れたいと思っている貴方にはそれを弁えていてほしいのである。

昨今もてはやされているウイスキー。
認知度が高いことは大いに結構なのだけれど、有名になればなるほど需要も上がり、それにつれて高価になっていく。
果てはそのウイスキーの質自体が大きく低下してしまうこともある。
現在のジャパニーズウイスキーが良い例だ。
シングルモルトは販売が終了しているものも多く、ブレンデッドの味も落ちたというのはかなり有名な話だろう。
バーで飲めないこともないが、かなりのプレミア価格がついている。
向こう10年は確実に、シングルモルトのジャパニーズ・ウイスキーを安心して飲める時代はやってこないという話もある。


スコッチのシングルモルトにも同じような状況が起きており、年数表記の入ったウイスキーを気安く飲めない時代となってしまった。

結局のところ世間が注目したからと言って、ウイスキーには樽熟成の期間があるため、急な流行に弱いのである。

大量生産の時代、需要と供給のバランスが易々と崩れてしまうイメージは想像しづらくはあるが、
ウイスキーは繊細な飲み物だ。
どんな居酒屋でも飲むことが出来る安いものでない限り、常にその意識を頭の片隅に置いておくべきであろう。

うるさい御託を潜り抜けた貴方へ。運命の一杯の探し方。

ここまで読んだ貴方はちょっと、肩の緊張をほぐしてよい。
上の見出しを熟読して、しっかりとわきまえた上で、美味しいウイスキーに手を出してみようじゃないか。

とりあえず、気のおけないバーを見つける

もしも貴方がいわゆるオーセンティックなバー、若しくはそれに準ずるようなバーに行ったことが無いのなら、自分が「良いな」と思えるような店に出会えるまで色々なバーにちょっとずつ足を運んでみよう。

麻布や六本木、銀座のような場所でなければ、一見さんお断りのお店や会員制のバーにいきなりぶち当たるということもないだろう(例外は無きにしも)。
フラフラと飲み歩くうちに、バーの雰囲気、マスターや店員さんのキャラの得手不得手が分かるようになる。そうして足しげく通うようになる店こそ、貴方にとって気のおけない店となっていく。

そして指標となるオフィシャルを決める

バーでは多くのオフィシャルのスコッチに手を出してみる。頼むときはストレートが好ましい。
ロックやソーダでは加水の具合が飲むたび違うこともあって味が判別しにくいからだ。

飲んだ時の香りや味の印象をメモしておくと、のちの参考になる。
自分で的確な言葉が見当たらないときは、他人のレビューをネットで検索してみるのも良い。
純粋に気に入ったかどうかを記号で表すだけでも構わない。
頼んだウイスキーのボトルは、大概マスターが自分の傍に置いてくれる。
そのボトルの様子もしっかり確認して、覚えておくと良いだろう。


そうこうしているうちに自分の舌の好みも分かってくる。
これくらいで運命の出会いの下準備は完了だ。

いよいよボトラーズをオーダー。ここから先は貴方の運と財力しだい。

目ざとい方ならどれくらいのウイスキーがそのバーの棚に置いてあるかや、オフィシャルらしからぬボトルを勝手にその棚から見つけてしまうかもしれない。
興味ありげにそれを見ていると、手隙の時間であればお店の方から声をかけてくれることもある。


何が置いてあるかなんて分からなくても、マスターとちょっと話を弾ませて気軽に質問すればいいのである。
概して多くのボトラーズは、配されるメニュー表には載っていない。
ここからは漢気を見せて、自分の好みのオフィシャルの話をして、それと似通ったボトラーズを自分から積極的に聞いていこう。

無論、お店の忙しい時間やオーダーをこなしている時に無理に聞き出そうとするのはナンセンスだけれど。

出典: www.flickr.com

同じ蒸留所のものを比較する飲み方もあるが、これはかなり舌に自信を覚えてから。

運命の出会いは、きっとこれから先に。

どんなバーにも必ずしもボトラーズが置いてあるということは無い。
この点は本当にそのバー、マスターの趣味に大きく左右される。
スタンダードな銘酒のみを置いているところも少なくは無い。
相手方に失礼の無いように、ボトラーズの有無の探りを入れるという駆け引きも楽しめるようになれればベストだ。


バーでのウイスキー探しには意外と気を遣うことや考えなければいけないことで溢れている。
けれどそれは、自分だけの最高の一杯に巡り合うための通過儀礼のようなものだろう。
こういった嗜みには、それ相応の身構えが必要なのである。

本当に好きな一杯に出会ったとしてもワンショットそれきりでおしまいの場合もある。
ボトラーズは種類が豊富な分、恐ろしくその供給量の少ないため、一期一会の出会いになることもザラだ。

そんな出会いに一喜一憂していると、彼の言葉の意味が何となく理解できるのではなかろうか。

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編集部 岡田悠吾

ウイスキーが深まる季節がきました。

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