カテゴリ: 大人の嗜みガイド

季節に「匂い」は存在するのか。

少し感覚的な話になってしまうかもしれないが、貴方は四季の移ろいによって匂いを感じたことがあるだろうか。

筆者自身ははっきりと、その季節の匂いを感じている。

冬は割と無個性な、無臭に近い匂い。湧き水の匂いにも似ているかもしれない。
春はやや甘く、若い葉や花が萌えぐ匂い。花粉の香りなのだろうか。
夏は地面の灼ける匂い。色々な物が、熱で気化した混じりけの匂い。

今くらいの秋であれば、鼻の頭でツンと薫る、スモーキーで、湿った落ち葉のような匂いだ。

これはなかなか電波な考えかもしれない。
もし人を考えずに言えば、
ある一定数からは共感を得つつも、半分以上の人間からは訝しんだ顔が返ってくるだろう。
だから、あまり口にしないことである。


けれど、色々な経験を重ね、物事にこだわりを持っているACCETORYの読者の皆様なら、
半分くらいの人から共感を得られるのではないかと期待して、こうして記事にしてみようと思う。

科学における「匂い」

現代科学によると、匂いの正体は揮発性物質の分子だと言われている。
鼻の粘膜にある嗅細胞が匂いの分子を察知し、その刺激を電気信号に変えて、情報を脳に伝達するのだという。
揮発性である匂いの物質は、一般的に温度の上昇によって空気中に舞う量が増えていく。


科学的に言えば、匂いの正体は物質として存在しているようだ。
温度変化により人の嗅覚の感度や揮発する物質の量が増減することと、
気候の変化により匂いを出す物質の種類が変化することが、季節ごとに移ろう匂いの正体である。
その季節ごとの匂いの分子が群れでどこかを飛び回っているようなイメージだろう。


筆者はチャキチャキの文系脳なので全く理系の方向に頭が回らないため、詳しいメカニズムの説明はご容赦いただきたい。

色は匂へど、散りぬるを。

今は昔。古語を用いていた時代。
そこで語られる「匂い」とは多義的なものであった。

かな文字の47字を用いて作られたいろは歌。

「色は(色葉)匂へと 散りぬるを 」という冒頭において、
そこで用いられている「匂い」という語は、色ないし色葉という主語から分かるように「色彩」を説明する述語として用いられている。

古語「匂ふ」は、かおりが漂うことや鮮やかに色づくこと、内面の美しさのあふれ出る様を表す動詞。
嗅覚だけでなく、視覚、雰囲気にまで発展する感覚を言い表した語だったようだ。
現代でもその名残が見られる例として、
「この事件は嫌なにおいがする」という例が出せるように、匂い≒雰囲気であるという意味の遺伝子は現代においても受け継がれている。


古語の意味はそこそこ有名なので、高校の古典でやった記憶がある方もおられるのではなかろうか。
目には見えない雰囲気として日本語が捉えている「匂い」と、物体として見なされている科学的な匂いが大きく性質の異なるものであることがここから分かる。

はっきりと目に見えるものではないけれど、そこにある。

四季という形で、気候の移ろいに区切りを設けた人類。
概念的な問題だけでなく実際の感覚として、五感全てに訴えかけてくる、明確な変化がそこにある。
例えば、夏が過ぎ気温が下がれば、当たり前に秋がやってくるように。

けれど、明確に秋だと実感できるようになるまでの間に、人はいくつもの前触れに出会う。それはしばしば秋の訪れとも言われ、人々の関心を集める。季節ごとの匂いは、その前触れの一要素として気付くことの出来るものなのだ。

もう一度古語の意味に立ち返ってみよう。
匂いとは、はっきりと目には見えないけれど、感覚的に察知できるもののことを言う。

季節の移ろいという、知らぬ間に変わりゆく環境の変化の一端として、俄かに香りが変化した様をたまたま捉えられただけなのだろう。

夏の夕立の後、気温がすっかり下がったからと言って、秋の匂いがそこに見出せるわけではない。
けれど、春の陽気とともに春らしい「匂い」を感じる2月の日は存在する。
結局のところ、その原因がはっきりとはしないのだけれども、
確かにそういう「匂い」が存在して感じる人間が一定数いる、
ということだけ知識として持っていて欲しいのである。


そしていつか、その感覚が分かって頂ける日が来ることを信じて筆を置きたい。

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編集部 岡田悠吾

ウイスキーが深まる季節がきました。

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