カテゴリ: ワイン

そもそも名前に腐って付いててヤバイ……

高級なデザートワインの一種としてしばしば名の挙がる貴腐ワイン。
なんていうか字面のせいで9割損していると思う。
勇気を出して味わえば「腐」の字なんて忘れてその華やかで甘美な味わいの虜になってしまうのだから。

貴腐ワイン自体はこのように、黄金に輝く液体は確かに高貴さを持っている。
見た目だけでなんだか甘くておいしそうだなーなんて思えるし、どことなくウイスキーとも似ている。

問題は「腐」の文字。
豆腐もそうだけど食べ物の名前に「腐」とか入れちゃう人の度胸はすごい。
貴腐ぶどうで造られるワインだから貴腐ワインというらしいが、このぶどうが出来る過程にボトリティス・シネレアという、もう字面だけで物を腐らせそうな菌が一枚噛んでいるらしい。

イチゴの表面ですくすくと育つボトリティス・シネレア氏

このボトリティスなんたら、普通にカビとして、植物に感染する。(画像参照)農家にとっては天敵みたいなものだ。

けれど不思議なことに、このカビが貴腐ワインを、美味しいワインにするのだという。
多くの場合、セミヨンやリースリングのような白ブドウがこのボトリティス・シネレアという菌に単独で感染するとケミストリーが起こり、貴腐ぶどうへと変化する。

白ぶどうの表面に感染したこの菌は、その果皮の表面の膜を溶かし、ぶどうの水分を蒸発させてしまう。
その結果、ぶどうの糖分が粘性を帯びるまで果肉に凝縮される。また菌の代謝によって貴腐香という独特の香りを持つようになるのだとか。
イメージとしてはちょうど干しブドウみたいな感じになるわけだ。

この貴腐ワイン。
ハンガリーのトカイ地方が最初に発見したとされている。
1650年のオスマン帝国の侵略によってぶどうの収穫が遅れたせいで偶然生まれたらしい。
几帳面に腐ったぶどうを廃棄していたらこの発見は無かったのだろうから、偶然とずさんな管理に感謝である。

世界三大貴腐ワイン

世界と言いつつヨーロッパのみではあるが、その美味しさはお墨付きである。
高級品も確かに多いが、3000円ほどで手に入るボトルもあるので、そういうものを探して飲んでみよう。

トロッケンベーレン アウスレーゼ (ドイツ)

これはドイツワインの中の甘さの等級の名前で、めっちゃ甘い分類に入る。
綺麗な黄金色をした果実の濃厚な香りが特徴。そのすべてが貴腐ワインというわけではなく、貴腐ワインに比肩する甘いワインもここに入るものが一部ある。

ソーテルヌ(フランス)

デザートワインとして良く好まれるのがソーテルヌワイン。セミョン種とソーヴィニョン・ブラン種のぶどうで作られる貴腐ワインで、蜂蜜のような香味を持っていて極めて甘い。口当たりも糖度も蜜のようにとろっと濃厚な印象。

トカイ(ハンガリー)

トカイワインには、主にフルミント種が用いられ、フランスのルイ14世をして“王のワイン、ワインの王”と言わしめた逸話が有名。
フルミント種は普通にワインを作ると辛口になるが、貴腐ワインになるととても甘くなるブドウ。結構不思議。

人間ってすごいね。

チーズも、納豆も、料理の世界において食品は菌の繁殖無くして語ることは出来ない。
ちょっとカビてるくらいならその部分を除いて食べるのもありえるが、がっつりカビの繁殖した食物も食べてしまうのだから人間はたくましい。そして美味しさに気付いたこともスゴイ。

貴腐ワインもそういった人間の知の結晶であるのだから、偉大なワインである。
これからは馬鹿にしないでありがたく頂こう。

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編集部 岡田悠吾

ウイスキーが深まる季節がきました。

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