カテゴリ: ウイスキー

煙たい香りを懐かしい、と感じるのは、青春を田舎で過ごしたからか。

ヨードチンキ臭。正露丸の臭い。
それはラフロイグの香りを嗅いだものたちが口々に語る感想として有名な定型句。

確かにクセの強いその香味は、好き嫌いが分かれるものだし、上のような例えもうなずける。


けれど、あえてその表現に異を唱えるのなら、あの薫香は青春の味だ。

青春の古傷がくすぐられる。
じっくりと味わえば味わうほど、照れくさくてほろ苦い、あの頃の気持ちが心の中に立ち込めてくる。
きっと小旅行だ。
多感な少年の頃の記憶に、時間を超越して浸ることが出来る、特別な旅路。
ラフロイグはその水先案内人。それか、口説き上手な旅の相棒なのだ。


どこか幼げで、自分自身とは何かを問い、不安に駆られていたあの頃を思い出す。
残暑を拭い去らんとする冷たい風が運んでくる、土や枯葉の煙たい香り。
転んだ傷に染みたチンキ。風と共に走り抜けた後の口は塩っぽい。

ラフロイグは郷里を偲びたい者にこそ薦めたいウイスキーである。
田園の広がるような田舎で育ったならば、言うまでもなくこの酒には浸れる。

きっと黙り込んでしまうか、唐突に知己に電話をかけて饒舌に昔話を語りたくなる。

ラフロイグ10年

スタンダードなラフロイグ。スモーキーな香り、そして潮っぽい味。アイラ島のシングルモルトとして模範的な味わいである。
最初は水割りかロックで飲んでみると良い。加水されたラフロイグはチンキの香りというより、スモーク感の方が目立っていて面白い。
この香りが平気だと思える方は、是非ストレートで飲んでもらいたい。
最初はスモーキーで薬品を彷彿とさせる香りとアルコール感ばかりが感じられるが、慣れてくると潮の味わいが分かるようになってくる。
そして、徐々にバニラのような甘みがほのかに感じられるようにもなる。
その液体が持つ複雑な味わいを、じっくりと紐解いてもらいたい。

価格は3500円ほどなので家飲みの一本としても置いておきやすい。

ラフロイグ PXカスク(ペドロヒメネスカスク)

端的に言えば甘さに振ったラフロイグ。
チンキのような香りはやや抑えられ、バニラやレーズンの香りを感じ取れる。
味わいはスモーキーながらもしっかりと甘く、後を引く塩っ気とタンニンのような重さが後味に残る。

個人的にはオフィシャルの10年を飲んでからこちらを飲んでもらいたい。
最初にこっちのイメージがついてしまうとラフロイグ10年のインパクトが薄れてしまうからだ。
ラフロイグとして見たら異端。一本のアイラモルトとして見たら面白いフレーバー。
そんな一本だ。

このラフロイグは計三回、別々の樽に移し替えて熟成される。

初めはメーカーズマークのファーストフィル樽で5~7年熟成。

ファーストフィルとは、これからウイスキーの熟成のために初めて用いる樽のこと。
メーカーズマークの場合はホワイトオークの樽の内側を普通より少し弱めに焼き上げる(普通は表面が炭化するほどカリカリに焼く)。

次にクォーターカスクで1か月熟成。
クオーターカスクは一般的な樽の1/4の大きさのものを使用することで表面積を増やし(およそ三割)、樽の風味を早く染み込ませる手法。

ペドロヒメネス・シェリー樽で1年熟成。
ペドロヒメネス種のぶどうで造られたシェリー酒(このお酒はとても甘い)の樽で熟成することで、フルーティで濃い甘さが香ってくるようになる。

難点として入手のし難さが挙げられる。
免税店やネットでの流通が主なので、変化球的なモルトを揃えたバーでないとお店で飲むことは出来ない。また、価格は1Lで9500円ほど。750mlで換算すると7000円くらいなのでやや高めのモルトと言ったところか。

浸りの酒で、夜を更かそう。

この酒は浸る酒だ。
酒のアテなんて必要ない。
食後にじっくりと、舐めるように味わってほしい。
その香味がもたらす懐古に浸りながら、ゆっくりと更けていく夜をまどろんでいけばいいのである。

今夜の一杯はラフロイグに決まりだ。

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編集部 岡田悠吾

ウイスキーが深まる季節がきました。

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