スコッチウイスキーの入門 第三回:シングルモルトの地域を知る。編

スコッチのシングルモルトにはたくさんの地域がある。 ハイランド 、スペイサイド 、ローランド、アイラ、キャンベルタウン、アイランズ。 スコッチ入門の第三弾はそんな地域ごとの簡単な解説と、味わいの傾向を見ていく。

スコッチウイスキーを語るなら、やっぱりシングルモルトを知らないと。

スコッチウイスキーと言えばシングルモルト。と言っても過言ではない。
何より特筆すべきはその種類の多さ。
スコットランドの中に存在するモルトウイスキーの蒸留所の数は100以上も存在する。
実際に全ての蒸留所がシングルモルトを販売しているわけではない。蒸留所によってはブレンデッドウイスキーに使用するためだけに生産している所もあるからだ。一般的に蒸留所が公式ブランドとして販売しているものを「オフィシャル」ものという。
このオフィシャルのブランドでさえ数十にも及ぶ種類がある。
沢山あるシングルモルトの種類を大まかに分けるため、6つないし5つの地域での区分が存在するのである。
面白いことに、この地域の区分によって味の方向性が似ているのである。

スコットランドを六つに分割。それぞれの場所と特徴をご紹介。

まずは下の地図を見てほしい。
それぞれの位置取りが色分けされて表示されている。
ハイランド (Highland)
スペイサイド (Speyside)
ローランド (Lowland)
アイラ (Islay)
キャンベルタウン (Campbeltown)
※ アイランズ (Islands)は省略されている。

見て分かる通り圧倒的にハイランド地方が大きい。そしてそれに囲まれる形で、スペイサイドが存在している。
大雑把に言ってしまえばスペイサイドもハイランドの一部なのだが、この一帯だけに50もの蒸留所があるために、ここを分けてスペイサイドと名乗るようになった。
上で省略されているアイランズモルトは、スコットランドに点在するいくつもの島を一緒くたにまとめた呼び方であり、これは正式な呼び名ではない。便宜上、ひとかたまりにされていると言う訳だ。
それでは、場所ごとに細かく見て行こう。

ハイランド

スコットランドの北の方に位置するハイランド地方にはおよそ40の蒸留所が存在している。範囲が広いため、味の特徴も定まってはおらず、ハイランドの中でさえ東西南北に分類するのが一般的。
誤解が生まれることを恐れないで大雑把に四方の特徴を分ければ、
北はスモーキー、南はフルーティー、東はなめらかなバニラっぽい甘さ、西はややドライでスモーキー。
といった感じである。
代表はやはり北ハイランドのグレンモーレンジィ。あの土屋守氏に「香りのデパート」とまで評され、生産体制もシングルモルトのみでしかボトリングされないほどに、シングルモルトの定番である。

スペイサイド

ハイランド地方東部のスペイ川の近辺をスペイサイドといい、およそ50の蒸留所が存在する(スコットランドの蒸留所の約半数!)。
スコッチウイスキーを作る環境として最高の地域であるためか、密造時代には1000あまりの密造所があったと言われている。
スペイモルトは全体的に華やかな甘みがあり、女性にもおススメ出来るモルトが多い。

代表のモルトを一つ選ぶ、と言った区別は恐らくこの地域にふさわしくない。
グレンリベット、グレンフィディック、マッカランなど、多くの銘酒が存在しているからだ。
どれも初心者が飲みやすいモルトである。

グレンフィディックについてはこちらの記事も読んでほしい。

「グレンフィディック」、忘れた頃にこそ飲みたい、名シングルモルト。

2016.11.02

ローランド

スコットランドの南の方をローランド地方という。かつては多くの蒸留所があったが、現在稼働しているのは2箇所のみ(安定稼働と言う意味では)。
モルトではいささか寂しく聞こえるが、グレーンウイスキーの生産やブレンドなどでは、ローランドが最も盛んである。穏やかな風味のウイスキーが多く、ハチミツや柑橘類のような甘さがふんわりと広がり、カクテルベースにも向く。

代表モルトはオーヘントッシャン。
軽い飲み口が魅力的なモルト。
オレンジやチョコのような甘い香りを持ち、ピリッとしたアルコールの刺激のあとになめらかな甘みが口の中に広がってくる。トワイスアップでは味が崩れてしまうが、数滴水を加えるとアルコールの辛さが取れて一層飲みやすくなる。

キャンベルタウン

キャンベルタウンはその昔30以上もの蒸留所が存在していたが、衰退してしまい2つの蒸留所が残るのみとなってしまった。そのため一番制覇しやすい。
キャンベルタウン全体の特徴としてはフルーツ感、オイリー、塩っぽい風味を持っている。この塩味というのがかなりの個性で、やはり海よりの地形がその香味を引き出している。
代表的なシングルモルトはスプリングバンク。シングルモルトの中でも極めてしょっぱい味わいが口に中に広がった後、優雅な甘みがやってくる。

先にアイランズモルトのタリスカーを飲んでしょっぱさに慣れておくのも良いし、いきなりこのお酒を頼んでみても楽しいだろう。
スプリングバンク蒸留所は他に二つの味の異なるブランドを展開しているため、実質キャンベルタウンには五種類のモルトがあると言っても間違いではない。もう片方の蒸留所であるグレンスコシア蒸留所も手に入りづらいが美味しいモルトだ。

アイラ

アイラモルトと言えば、スコッチの代名詞でもあると言える。この島の8つの蒸留所はどれも個性が強い。蒸留所が海辺にあり、熟成樽が常に潮風を受け続ける影響からヨード臭がする。また、たくさんのピートを焚いたことによる、スモーキーさも特徴的だ。アイラ島も、スペイサイドと同様にウイスキー造りがしやすい土地柄であり、製造も盛んな地域である。

アイラの有名なシングルモルトと言えばボウモア、ラフロイグの二本だろう。
どちらもスモーキーなモルトで、ヨード香という「正露丸」のような香りがするため好き嫌いが分かれる。最初はこのスモーキーな香りにばかり反応してしまいがちだろう。
しかし、香りやアルコール度数に慣れてくれば味わいはどちらも面白く、ボウモアには塩気とフルーティさを感じ、ラフロイグにはバーボン樽由来の甘みを見出すことが出来る。

アイランズ

アイランズとは、オークニー諸島、スカイ島、マル島、ジュラ島、アラン島にある6つの蒸留所を指す。
残念ながら、他の地域とは違って「この地域特有の~」と言った講釈を垂れることが出来ない。
と言うのも、スコットランドの北部と西部に点在する島々を便宜上まとめているに過ぎないからだ。

ここの詳しい解説は、また別の機会に触れよう。
ハイランドパーク、スキャパ、タリスカーと名だたる銘酒が揃っている。
スコッチの特徴が複雑に絡み合った味わいで、飲みやすくありながらも玄人もうならせる。

画像のハイランドパーク12年は、蜂蜜のような甘い香りがありながらも、華やかでスモーキーな香りを持っている。ヘザーな香りを知りたい時はこのモルトを飲むのがいいのではないか。(日本に自生していないが生花ではツツジの香りが一番近い。)
味わいは、最初にじわりと甘さが感じられた後、酸味とスパイスの刺激がやってくる。
基本的に食前、食中、食後のどれにも対応できて、バーで最初からこれを頼むのもオツなもの。

スコッチウイスキーをたしなむことは、長い旅の始まり。

スコッチのシングルモルトは奥深い。
これらの六つの地域を知ったところで、それはただの入り口に過ぎない。
それこそ、人生を楽しむように、じっくり、ゆっくりと経験を積んでいけばいいのである。

面白いことに同じモルトでも、熟成の度合いやその工程によって、違った一面をのぞかせることがある。
先ずはスペイサイドや、ハイランドモルトの有名どころを飲んでみて、徐々に色んなモルトを飲みあさって欲しいものである。

(間違っても誰かみたいに、ラフロイグから始めたりしないように。)

続きはこちら

スコッチウイスキーの入門 第四回:キーモルトとその遊び方。

2016.12.16