ヘンドリックスジン【HENDRICK’S GIN】 プレミアムジンを語ろうシリーズその1

さて、世のジン好きよご傾注。 ヘンドリックスジンはご存じだろうか? ゴードンもタンカレーもすっかり飲んで、ジンの虜になってしまった諸君達には、 プレミアムなジンに手を出してもらいたい。 同じ蒸留酒のウイスキーほど値段が馬鹿みたいに吊り上らないので「プレミアム」なんて単語に怖気づく必要もない。 今回はそんなプレミアムジンの中からヘンドリックスをご紹介しよう。 ジミ・ヘンドリックスじゃなくて ジン・ヘンドリックス。

プレミアムなジンのススメ

ジンは美味しい。
キンキンに冷やしたあの透明な、トロリとした液体をゆっくりと舌の上で溶かしていく……。
するとアルコールの熱っぽさと一緒に、豊かで爽やかな植物の香りが口を、鼻を、包んでいくのである。
初めてジンをストレートで飲んだ時、この酒を何かで薄めて飲んでいた自分の過去を責めた。
ジントニックもマティーニも、無論美味しい。
けれどキンキンの、何にも薄まることの無いジン(これを勝手に純潔のジンと呼んでいる)
は、高貴で力強い。虜になったら最後、ただただひれ伏すのみである。
これらのジンを喉で味わおうとしてはいけない。
口の中でやんわりと溶かしていき、徐々に広がっていくボタニカルな世界に、身ごと委ねるのである。
そうすることで初めて、得も言われぬ口当たりと芳醇な香りとを一杯で楽しむことが出来るのだ。そういう風に味わうジンは、やはり特別でなければならない。ビーフィーターもゴードンも、ジンとしては悪くないのだが、あと一歩何かが足りない。
そう、その一歩を満たし、心の底から酔わせてくれるジンが、プレミアムなジンなのである。

こだわりとクオリティの塊であるかのようなジンの世界へようこそ

今回紹介するのは、タイトルの通りヘンドリックス・ジンである。ジンと言えばロンドンやオランダが有名だが、こちらはスコットランド産のジン。ウイスキーメーカー「ウイリアム・グラント&サンズ社」が手がけている。44度で700ml、お値段は3500円と少々とけっこう強気な設定。
しかし、飲めば合点がいく。このジンはその値段に見合うジンだ。

ヘンドリックス・ジンは、その中に含まれている11種類のボタニカルフレーバーをすべて紹介している。
ジュニッパー、メドウスウィート、キャラウェーシード、アンジェリカルーツ、カモミール、エルダーフラワー、オレンジピール、コリアンダー、レモンピール、オリスルーツ、キュベブベリーズ。
フレーバーだけ見れば全体的にいささか酸味と爽快感に振っているラインナップ。
さらにそこにきゅうりと薔薇の香りを添えていることを売りにしている。

キューカンバーカクテルは、西洋ではメジャー。

きゅうり?そんなものを入れて本当に大丈夫なのか?と不安になる方も多いかもしれないが、香水や化粧品にすら使われるくらい、香料としての立ち位置を確立しているきゅうり。ツンとした、青みのある香りは、とてもいいアクセントとなるのである。
薔薇というのも面白い。しかも使われている薔薇は香料として最高級と言われるブルガリア産のダマスクスローズである。この薔薇の持つ甘く優しい女性的な香りは、上記のフレーバーの中に含まれているオリスルーツの持つスミレの香りとの親和性が高い。

きゅうりの青さ。そして酸味に振ったボタニカル。華やかで優しい甘さ。
強く感じるのはやはりジュニパーベリーだが、よく口の中で転がしていくうちに、ふんわりと他の香りたちが顔をのぞかせる。
このプレミアムジンは言わば飲む香水だ。
様々に組み合わされた香りを紐解くには、一晩の晩酌ではとてもじゃないが時間が足りない。

ヘンドリックス ― それは薔薇。まるで英国の女王に献上するために育てられた、一輪の薔薇だ。―

きゅうりや薔薇の香りを強く期待しているのなら、肩透かしを食らうかもしれない。
ヘンドリックスも、あくまでジュニパーベリーの香りがベースにある。その香りはジンのアイデンティティであるのだから、様々な個性がどんなに尖っていようとも、その要素だけは引き算できないだろう。
そのベースの香りを踏まえた上で、他の香りのノートを見出していくのである。

それでは物足りないと、貴方は思うだろうか。私はこう思う。
大輪の薔薇の中に顔をうずめるのもきっと幸せなことだが、それは少々香りが強すぎる。
もっと、一輪の特別なバラからふんわりと匂う香りを、じっくりと吟味するように感じるべきなのである。きっとこのジンの薔薇のフレーバーが今より個性を主張していたら、大好きで特別なジンにはならなかっただろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です