カテゴリ: ウイスキー

暖かな暖炉、そしてクリスマスキャロル

パチパチと、火にくべられた薪のはじける音を聞きながら、『クリスマス・キャロル』を読む。
例えばそんな情景の傍らにいるべきウイスキーが、グレンドロナックだと思う。

ディケンズ(彼はイングランド人なのでスコッチとともに紹介するのはいささか気が引けるが。)の名作『クリスマス・キャロル』には、過去・現在・未来の3人の幽霊が登場する。
その中の現在の幽霊が持つ松明は、貧しい食卓を美味しくしたり、怒りを鎮めたりする魔法の香料を出すことが出来る。
なんだかグレンドロナックを飲むと、この松明が思い浮かぶのだ。


それは一つに、このお酒の火のイメージからだろう。
ウイスキーは元より、樽熟成の独特の香りを持ち、アルコール度数も高く、カッと顔も火照る。
その様な印象から火のイメージを彷彿とさせる飲み物だ。

けれど、グレンドロナックのイメージは煌々と燃え上がる火ではなく、先のような松明のイメージだ。
赤みがかったアンバー色の見た目は暖かみがあるし、ほろ苦いダークチョコの味わいにほっとすることが出来る。

松明の火は暖かみと安心の象徴だ。一寸先もおぼつかない暗い夜道を照らしてくれる、小さくも暖かな火。一口含めばアルコールの刺激とスパイシーさが燃え盛り、徐々に色々な香味に揺らめいていく。
ナッツ、ドライフルーツ、シナモン、チョコレート、そして飲み込みはミルクのようになめらか。
グレンドロナックの持つそれらの風味が、次々に移ろいゆく様を、アルコールの刺激にびっくりして飲み込んでしまうのではなく、受け入れて、感じるのである。

初心者も上級者も。飲みやすいものだから深みがある。

多分このお酒をスコッチ初心者が飲んだのなら忘れない味になるだろう。(もちろん、アイラモルトとは別の意味で。)
飲みなれていない方でも受け入れやすい甘い香りが、このお酒にはあるからだ。
しかし、フィディックと同じで、このお酒にも深い味わいがある。
ああ、ペドロヒメネスとオロロソの味わいだったんだ、なぁんてことがちゃんと理解できる中・上級者だからこそ楽しめる、発見もあるのである。
人生を通して飲んでいきたい一本であることは間違いない。

グレンドロナック12年

正直、この価格帯で同じようなシェリー樽熟成のものと比較したらトップクラスの完成度であることが保証できる。辛口のオロロソと甘口のペドロヒメネスシェリーの樽で熟成している。
そこから織りなされるダークチョコレートとドライフルーツの甘さが絶妙。長くまったりとしたアフターテイストも魅力だ。
塩気の無いマカダミアやアーモンドなどをつまみにしながらストレートで味わうのが良いだろう。

バランスの良い甘みと苦みを持つため、ハイランドモルトの中でも入門に位置するだろう。
700ml 43度でお値段は4000円ほど。決して安くはないが、シェリー熟成のスコッチが好きなら迷うことは無い。

グレンドロナック15年 リバイバル

香りはフルーティーではっきりとしたナッツっぽさ。味は重みがあり、熟成感を非常に楽しめる。ほのかにスモークを感じられるのが美しい。
あとからスパイシーさがやってくる。唐辛子のような辛さ、ナツメグ、チョコレートやコーヒーを思わせる甘さ。ジンジャーを感じる後味も良い。
目を閉じてじっくり、30分くらいかけてワンショットを味わうようなウイスキーだと思う。
この味わいに邪魔なノイズなどいらないので、ミネラルウォーターを小脇に抱えて味わいたい。

700ml 46度、メーカー終売のため、値段が推移し始めているが、今なら7000円ほどで手に入る。

スイートでファンタジック。

クリスマスキャロルは、空想の物語でしかないが、きっと魔法の香料を出せる松明が現実のものであるなら、この美酒のことを指すのであろう。
暖かな緋の輝きにも似たこのお酒を傾けながら、その温もりの秘密を自分なりに紐解いてみてはいかがだろう。

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編集部 岡田悠吾

ウイスキーが深まる季節がきました。

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