焼き鳥を頬張りながら、日本ワインを考える ー湯島6vin スタンドにてー

今流行の真っただ中にあるといわれる日本ワイン。でもまだ飲んだことがない、何を飲めばいいのかわからない、そういう方も多いのではないだろうか?そこで今回アクセトリーは、日本ワインにこだわりを持つ「湯島6vin スタンド」で、日本ワインの実力を体感してみることにした。

日本ワインのブームは、本物か、張りぼてか。

日本ワインがブームだ、今や世界レベルだ、そう喧伝されるようになって久しい。
だがブルータスで特集が組まれるほどの盛り上がり(2015 10/15)とは裏腹に、つめたい目線を投げかけるワイン呑みたちも、少なからずいる。
今回、私は日本ワインと焼き鳥のマリアージュを追求し続ける「湯島6vin スタンド」で、日本ワインの実力を試してみることにした。

日本ワインの固有のブドウ品種についてはこちら。

日本ワインを代表する品種四選!! -これがわかれば日本ワインがわかるー

2015.11.24

早速の日本ワイン×焼き鳥

ドメーヌQ ピノ・ノワール

最初に頂いた一杯は「ドメーヌQ ピノ・ノワール 2014」。
収斂味の強い、軽やかなピノである。

これに合わせるお通しとして出てきたのは「ミニトマトの甲州シロップ漬け」だ。

可愛らしいピノに可愛らしいミニトマト。軽快な酸味が合う。
ワインのような色のミニトマトに、ミニトマトのような色のワイン。舌だけではなく、目でも楽しめる組み合わせだ。

とはいえこのワイン、繊細な割に結構タンニンがあるので、ミニトマトの甲州漬けよりは、素朴な煮物のほうが相性がいいのではないか。
甘くない煮物、それも関東風の濃口の醤油で香ばしく味付けた素朴な煮物との相性がいいはずだ。

ワインに合わせて変える焼き方、味付け。

ここで焼き鳥が登場。
最初に供されたのはバジル焼き。おそらくはささみであろうか、淡白な肉質の鶏肉にバジル風味のチーズがとろりとかけられている。

店主の方から軽く聞いたところ、お客さんによって、またその人の飲んでいるお酒によって、味付けや焼き加減を変えているのだという。

その時私がのんでいたのが農民ロッソという赤ワインだったから、バジルとチーズで仕上げたのだ、という。
非常に面白い趣向だし、なるほど確かにクリーミーなチーズと淡白な肉質の組み合わせをバジルの香りが引き締めるこの一本はワインにもよく合っていた。



バジル焼きと主に私が飲んでいたのは、こちらの農民ロッソだ。

この農民ロッソも面白いワインで、カベルネ、メルロー主体のボルドースタイルのワインでありながら味わいは真逆。繊細で軽やか、チャーミングな表情を持っている。
細い糸で編まれたニットのようなあたたかな舌触り、飲み飽きない味わいであった。

焼き鳥との相性は非常に良い。特に脂の質がいい鶏、それか淡白な部位とは絶妙な相性を見せるだろう。

同じくワインとの相性が最高だったものに「ペコロス(小玉ねぎ)の串焼き」がある。
その時私が飲んでいたのが「くらむぼん ベルカント」というマスカットーベーリーAのワインだったからだろうか、香ばしいタレと胡椒の味付けで供されたペコロスは完璧なマリアージュをみせた。

マスカットベーリーAは日本固有の品種で、イチゴやさくらんぼ、ラズベリーのようなチャーミングな香りと、べっこう飴のようなひねた味わいをあわせもつワインになる。



ペコロスと呼ばれる小玉ねぎ。玉ねぎに独特のくさみがない。



ペコロスと合わせたのは、こちらの「ベルカント」。べっこう飴のような独特の香りがペコロスによく合う。

ぼんじり×甲州ソルルケト

そういえば白ワインを飲んでいなかったな、と思い出して注いでもらった一杯がこの「くらむぼん ソルルケト甲州」。
いやあ、これにはたまげた。
実をいうと、私は甲州のワインがそこまで好きではない。
基本的に薄味のものがおおいのと、品種に独特の「米っぽい香り」が得意ではなかったからだ。(その香りが好きな人もいる)
だがこの「ソルルケト甲州」は別だ。スキンコンタクトで香りを引き出した後にステンレスタンクでかもしたというこちらの甲州は、桃のような甘いアロマを、スダチのような爽やかな香りで引き締めている。
こんな甲州があるのか!と自分の認識をあらためた。

雄大な草原というよりは、草むらや畦道を想起させるような幼さ。そう、そこにあるのは若々しさというよりは幼さに近いなにかなのだ。

プールの授業の後の帰り道のけだるい蝉の声。
小学生の時は当たり前だと思っていたけれども、今では遠い過去になってしまった甘ったるい夏の熱気。
このワインのもつ透明なモモや柑橘のアロマは僕らの憧憬をかきたててやまない幼さを持っている。

そしてゆっくりとグラスを傾けるうちに、その幼さは段々と消え、代わりにすこしひねたような苦い香りが支配的になる。ここも非常に面白い。
柑橘類の皮と、微かな米ぬかの香り。そう、甲州に特徴的なあのアロマが微かに漂ってくるのである。


外はカリっと、中はジューシー。ぼんじりの見本のような一本。

そしてこのタイミングで、焼きたてのぼんじりをほおばるのだ。
ごま油、レモンがふられたとおぼしきぼんじりは、まさにお手本のような焼き上がり。
カリっと噛むと、しつこいところの全くない脂が口の中にあふれ、柑橘とごま油の香りが鼻孔をくすぐる。

これが甲州の香りと合わないわけがないではないか。
ワインの甘いアロマと、ぼんじりの脂の甘み。米のような香りとごま油の香ばしさ。柑橘系の苦味と、レモンの爽やかな香り。

さらにこのワインを魅力的なものにしているのは、その安さであろう。
「湯島6vin スタンド」を来訪したのちに調べた価格ではなんと楽天で1330円(税込)、日本ワインでこのコスパはすばらしい。
そういえばグラスで飲んだからボトルの値段がわからなかったな、と思って「湯島6vin スタンド」のHPをのぞいてみたら、ボトルで1990円なんて書いてあるじゃないか。原価大丈夫か?なんて心配をしてしまうほどの値付けである。

日本ワインへの考察

日本ワインは世界レベルである、そう盛んに喧伝されていると、冒頭で述べた。
私も、日本ワインが世界レベルである、ということには同意する。
しかしながら、決してそれは世界最高レベルであるということを意味しはしないのだ。
おそらく同じ値段で比べれば、今回呑んだワインよりレベルの高いものは多くあるだろう。
完成度でも歴史でも、日本は他の国に比べまだまだ劣るところが多いのだろう。

ただ、ワインは100点満点のテストではない。そこを誤解してはならない。
ワインとは嗜好品なのであって、もっと言えば国、テロワール、品種、作り手の「表現」であり、「作品」である。
その点で日本ワインは、すでに日本ワインの個性、表現を確立させているようにも思える。
独特のコロコロとした可愛らしさは、日本ワイン特有のものでもあるし、特に今回呑んだワインは、凡庸で画一的なものでは決してなかった。

また焼き鳥をはじめとした和食との相性の良さも特筆に値する。
「和食なら日本酒飲むわ」という意見は多く見かけるけれど、海外に日本食を輸出することを考えたとき、日本食に合うワインがさまざまバリエーションあるということは極めて重要になってくる。

無論、私が今回飲んだのが、あくまでテーブルワインの価格帯のワインであるということは念頭においてほしい。

今回訪れたお店はこちら

湯島6vin スタンドHP

気軽に立ち寄れる上に、日本ワインの楽しさが理解できる、そしてなにより焼き鳥がうまい。
湯島6vin スタンドはその点で貴重なお店である。
価格的に安いとはいえない日本ワインを低価格で提供する苦労は大きいと思うが、長く続いてほしいと思う。

なお、紙幅の都合上紹介できなかった料理やワインもあったが、そのどれもが非常に高い質を持っていたことを最後に付け加えておく。

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