カテゴリ: ワイン

お酒を飲む時に傍らにあるもの。

少し、考えてみてほしい。
あなたがお酒を飲む時、傍らには何があるだろう。
一人は、仲間との会話と言う。また一人は、食事と言う。
映画を観ながら、音楽を聴きながら、思いに耽りながら……。
各々のお酒の傍らには、必ず何かが存在している。

けれどそれは、決まりきったものでなくて良いはずである。
正解は無い。自分が気に入ったスタイルで楽しめばいいのだ。


今回はそんなお酒をたしなむスタイルの一つを提案しよう。
テーマは酒×古書。
お酒を飲みながら楽しむ選書イベントで、じっくりと本に向き合ってみた。

SAKE TO BOOKS-本と人のマッチングイベント-

SAKE TO BOOKSをご存じだろうか。毎回様々な場所で、お酒を飲みながら自分に合った本をチョイスしてもらい、それを読むというイベント。もし気に入った本があれば、その場で購入も出来る。
主催者はbook pick orchestra の川上氏。この取り組み以外にも、様々な選書のイベントを催している。

今回は南青山にあるFARO(ファロ)というシェアオフィスのイベントスペースを使って行われた。
取材は2016.2.27(土)でイベント自体も17:00~22:00頃と日の落ちかけからまったりと、読書の虫になれる。

イベントは、お酒を選んでから本を選んでもらう。という流れのようで、
先ずは、お酒から選ぶ。
今回は、FAROに併設されているレストラン「PORTUS」(ポルトゥス)のソムリエ、岩井氏がセレクトしたオーガニックのオーストリアワインが中心に用意された。イベントで選ばれるお酒は、場所によって日本酒などの場合もあるが、ワインの場合が多いようだ。
今回のイベントにも日本酒やビールもあり、もちろんノンアルコールのドリンクも用意されている。

ラインナップは
アルコール:500円
ゲミシュターサッツ(オーストリアの白ワイン)、
ソーテルヌ(デザートワイン/甘口ワインの白)、
オレンジワイン(ジョージア)、
日本酒(パラダイ酒)、
ビール(カールスバーグ)

ソフトドリンク:300円
オレンジジュース、
烏龍茶


岩井氏はどのようにして選書イベント用のワインをチョイスしたのだろうか
後日、メールにてお話を伺った。

選書イベントで出すワインを選ぶということで、どんな選び方をしたのか。

岩井氏「まずストーリー性のあるワインを考えました。
それはワインの歴史、文化、作る人々の心意気や気持ち、さらには食文化です。

一冊の本が持つ、文字だけでない背景にある文化や物語を楽しめるように、
ワインもその一杯が持つ物語や文化を楽しんで欲しいです。
本と同じようにワインにも出逢いがありますから。

本を読むことは知識や知的感覚を刺激して脳が活性化することだと思います。
対して、ワインを飲むことは味覚や嗅覚など五感に作用します。
本を読みながらワインを飲むことによってその二つが同時に満たされるのではないでしょうか。」

せっかくなので、ACCETORY編集部はオレンジワインとゲミシュターサッツを選択。
実際に飲んでみると、
オレンジワインは世界でも最古の作り方の一つとして紹介されることが多い。厚みのある味わいで、柑橘系の苦味とすこしベリーっぽいコクのある甘み、酸味はそこまでないが、辛口の部類。
ウィーナーゲミシュターサッツは、クラシカルな製法である色々な品種のブレンドで作られているけれど、味は現代的な印象、ボルドーの若いワインに近いものがあるようにも感じられる。切れ味のよい印象を受けた。

どちらのワインも、岩井氏の述べるようにストーリー性、歴史が感じられるワインであり、現代に生きる我々にとってはむしろそれが新しい刺激として感じられた。
読書という行為を高めてくれる、良い導入剤だと言えよう。


そして次に、川上氏に本を選んでもらう。
ワインを飲んでいるとのことで、洋酒の傍にあっても負けないような重厚感がある本が良い。というなんとも無茶ぶりなリクエストを投げかけてみた。
川上氏はあれやこれやと迷いながらも、一つの本を差し出してくれた。

バルザック全集である。
川上氏「バルザックはまさに文豪と呼ぶにふさわしいフランスの作家です。大きなスケールの物語が評価される一方で、私生活では大食漢で借金まみれであるといった豪快な人生を送ったことでも有名です。本の装幀も、内容に負けない手の込んだもので、洋酒の深みにもふさわしいと思います。」
確かに、緑を地に金の装飾があしらわれていて、なんとも洋酒向きな装丁である。正直、傍に置いておくだけで楽しくお酒が飲めそうだ。
お酒と食事、という部分からバルザックへと結びつけた川上氏のチョイスの妙も光っている。
本来はその日の気分や悩みなどを川上氏に伝え、三冊ほど選んでもらうのだが、文学好きな筆者はその後大興奮でたくさんの本をチョイスしてもらい、このザマ。

山のように積まれた本に読みふけりたい気持ちに後ろ髪を引かれたが、
川上氏に、このイベントのコンセプトについて伺ってみた。

どうして本とお酒とをかけ合わせたイベントを開催したのか。

川上氏「お酒は一人でも楽しめるけれど、みんなでも楽しめるものです。普段とらわれている日常から外れることが出来るツールなので、堅苦しくならず、楽しめる雰囲気、空間を作るために自然とお酒を選びました。」
実際のイベントの空気感も、参加者同士の軽妙な会話や音楽によって、決して重苦しい雰囲気はなかった。川上氏の創り出すその空間は、誰もがお酒と本と、人とに浸れる場所となっている。

どんな方に来てもらいたいか。

川上氏「本をなかなか手に取れない方にはぜひ来てもらいたいですね。
本を全然読まないから恥ずかしい、本好きの集まるイベントには行きづらいという話を聞くんですが、気にせず来ていただけたらうれしいです。気に入った本が無ければ買わなくても良いので、お酒を飲みながら、気軽に楽しんでもらいたいです。」

実際に当イベントでも本にあまり詳しくないという人が、川上氏に手ほどきを受け本とお酒をじっくりと楽しんでいる様子が見受けられた。
川上氏の熱心な本への想いとプレゼンを聞いていると、何故だか読んでみたくなってしまうのだ。

川上氏「あんまり本を読まない方も、本をたくさん読んでいる方も含め、仕事柄色々な人たちの話を聞いていると、本を読むときに『何を読んだらいいのかわからない』とか『本の趣味が偏ってしまう』という声が大きいので、今までと違った角度で僕が本を提案し、それに触れてもらうことで、本の世界をもっと広げてもらえたらうれしいですね。」

本もお酒も、知っていてナンボという風潮が根強い。
けれどその肩筋の張った考え方は、時として初心者の敷居を高くしてしまう。
そんな緊張がスッとほぐれるような雰囲気がこの「SAKE TO BOOKS」には漂っている。

本を読み、ワインを含み……、

川上氏からおススメされた本の山から一冊、手に取ってみる。
読書をしながら、しばし色々なことを忘れて、その世界に深く入りこむ。
そして時折、ワインを口に含む。

どんな本がお酒に合うのだろう。文豪バルザックの全集も最高にマッチしているが、今回おススメされた本はどれもお酒と親和性があるように思う。
物語や、知的好奇心を刺激的する書物をじっくり読む際、適度にお酒を挟むことはその集中力を高めるために一番勝手がいいのかもしれない。
その親和性は、ワインと本の相似点に起因しているような気がする。


岩井氏が言うように、それは歴史と文化である。
どちらにも人間が積み上げてきた長大な歴史と、その歴史と共に形成されてきた文化とがあって、現在の我々がありつけるのだから。

それはきっと今目にしているような電子媒体ではダメなはずだ。紙が製本され、一つの厚みとして存在しているものを手に取り、視線を落とす。その行為にこそ、ワインは呼応し、馴染むのだろう。

例えば、食前に軽めの白ワインを開けながら、エッセイを読むのでもいい。
または、食後にじっくりとデザートワインを舐めながら、時間を忘れて異国の文学に触れてみるのも良い。

本の傍らにお酒を、お酒の傍らに本を。いつもとは言わない。たまにはそんな付き合い方をしてみては如何だろうか。


今回お話を伺った方

川上 洋平 氏

book pick orchestra代表
ブックピックオーケストラは、本のある生活をふやすために、新たな本のあり方を模索し、人と本が出会う素敵な偶然をつくるユニット。図書館や文学館、美術 館での本の企画・選書・ワークショップをはじめ、益子STARNET、新宿HAPONなどギャラリーやシェアオフィス、カフェでのブックコーナーの担当、 オリジナル商品「文庫本葉書」、「文庫本画廊」の販売など、本を選書するだけに留まらず、さまざまな場所で人が本と出会う体験をデザイン・企画している。

book pick orchestra公式ブログ

岩井 穂純 氏

AWMB認定オーストリアワイン大使
JSA認定ソムリエ
都内のワインバー、高級レストラン勤務を経て神楽坂ラリアンスのシェフ・ソムリエを長年に渡り勤める。
その後丸の内マルゴルナソラの立上げマネージャー/ソムリエを経た後インポーターのワインコンサルタントに就任。
現在、南青山レストランPORTUSプロデューサー/マネージャー。
オーストリアワイン普及団体「AdWein Austria」代表。
アカデミーデュヴァン講師。

取材場所

FARO -creative workplace-

107-0062 東京都港区南青山 2-15-5
TEL: 03-5772-3653

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編集部 岡田悠吾

ウイスキーが深まる季節がきました。

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