カテゴリ: ウイスキー

ボトラーズとは何か?

以前こちらの記事でもふれたように、

ウイスキーの中には「ボトラーズブランド」(ちぢめてボトラーズとも)と呼ばれる、蒸留所のウイスキーに手を加えた物が存在する。
「オフィシャル」のウイスキーが蒸留から熟成、ボトリングまで一貫して行われているのに対して、
「ボトラーズ」は熟成させている原酒を樽ごと瓶詰め会社が買い取り、独自に瓶詰めを行い販売する。


「ボトラーズ」は、蒸留所のコンセプトではなく独自のコンセプトを持って、ウイスキーを熟成させていく。例を挙げるなら「オフィシャル」のウイスキーでは発売されないような熟成年数で提供したり、新たな熟成の手法を取るため、 例えば同じ『マッカラン』でも、「オフィシャル」と「ボトラーズ」では、異なる香味となるのだ。

どちらが珍しいかと言えば、もちろん流通本数が少ない「ボトラーズ」だと言える。しかし、希少性があり値段が高いからと言ってすなわちそれが美味しい、自分好みだ、となるわけではない。
例え方が悪いが、決して安くはない一本のウイスキーを買って、博打をしているような感じの方が正しいのではないだろうか。
だから、損した気分になると懐が痛む、気持ちも空振る。そのことを肝に銘じた上で、この「ボトラーズ」に手を出してもらいたい。

試飲をする

高い買い物をして大コケしても仕方がないので、ワインのように試飲してみることをお勧めする。
どこでも出来るというわけではないが、 ボトラーズウイスキーもしっかり揃えているようなところでは、原価に等しいような値段(数百円)を払って少量試飲することが出来る。マナーとモラルを守りながらこのような場所を利用してみてはいかがだろうか。

ボトラーズウイスキーのラベルに注目する

さて、それでは実際にボトラーズウイスキーの見どころを確認していこう。

よくワインで取り上げられることはあるが、ウイスキーにおいてもボトルに貼られているラベルを侮ってはいけない。
「オフィシャル」でも「ボトラーズ」でもラベルには意外と多くの情報が記載されている。
見どころを一つ一つまとめたので、実際のラベルを見る際に心掛けてほしい。

ボトラー

前述のとおり、原酒を瓶に詰める業者を指す。
独自の商品企画に基づいて、蒸留所の原酒を熟成し、瓶詰め、販売を行う。
原酒を蒸留させるところから、蒸留所に要望するケースもある。



有名なのはゴードン&マクファイル(Gordon&Macphail)社。
1895年に創業した、ボトラーズ界の先駆的会社で、扱う蒸留所や展開するブランドも多岐にわたる。

他のボトラーも含めた詳細は後ほど別記事で。

赤丸で囲んである部分がボトラー名。キングスバリーと書かれている。このボトルは同社の代表的なゴールドラベルというブランドで、大きく蒸留年が書いてあるのでわかりやすい。 正直、一番最初は蒸留所名なのか、ボトラーの名前なのか分からない。そういう時は大人しくバーのスタッフにラベルの見かたを聞こう。

蒸留所

「オフィシャル」ボトルが出ているモルトであれば、蒸留所らしい香味を知っていることも重要だ。
それらを基準としなければ、多種多様な「ボトラーズ」の味わいがどう変わっているのか、判断がつかない。
大概は、どの蒸留所のモルトなのか記載がある。
しかし例外として、蒸留所を介さないでボトラー間で取引された原酒などには、蒸留所名を伏せなければならず、ラベルに記載がないこともある。

ゲール語で書かれているため読みづらいがロッホインダールと読む。 蒸留所自体は1929年にすでに閉鎖されてしまったが、ブルイックラディ蒸留所がその名を借りたシングルモルトを2007年に限定蒸留したものがこれである。 流通が数百本と少なく、片手で数えるくらいの種類しかリリースしていないため、あまり見かけない。

アルコール度数

「ボトラーズ」は「オフィシャル」とは違い、樽出しした原酒に加水をしない場合が多く、総じてそのアルコール度数は高めである。
大体50度弱~60度強になるため、普段ストレートでウイスキーを嗜んでいる方でも、かなり強いアルコール感に襲われる事だろう。
加水されていないものは「カスクストレングス」(cask strength)という表記があるので一目瞭然だ。
人によっては樽出しのウイスキーなどという場合もある。
「 シングルバレル」(一つの樽)からボトリングすることもあれば、選りすぐりの樽同士をヴァッティングすることもあり、それはボトルのコンセプトによってまちまち。

樽出しの度数である63.5度のシングルカスク。 若い年数と高い度数から、刺激の強さをイメージするかもしれないが、それを感じさせないくらいのピート香があるため、飲んでいて気にならない。

蒸留年代

一番マニアックで、一番習得の難しいところ。
同年代でも「ボトラーズ」ごとに当たり外れがあるし、
年数が古いほど、今となってはプレミアがついて気軽に飲めない、それどころかそもそも存在するのか、というボトルばかりのため、実際に全て味わって判断することは不可能。

マイケル・ジャクソン氏の名著「モルトウィスキー・コンパニオン」などを参考に、アタリをつけるしかない。

また、バーでシングルモルトが得意なバーテンダーに出会ったのなら、「この年代の○○はどんな評価だったのですか」と聞いてみるのも良いだろう。

DISTILLED INと書かれているため、蒸留年のことだと分かる。 このモルトの場合はこの年のみのボトルしか出ていないため他の年代との比較はできない。こういった例は稀で、有名なモルトであれば、高確率で同じ熟成年数で、蒸留年代が異なるものが見つかるだろう。

熟成年数

若いものもあれば、「オフィシャル」でも出てこないような熟成年数のものもある。
値段は当然、熟成年数が長ければ跳ね上がるため、一種の指標としてこの熟成年数を見ると良いだろう。

5年熟成で市場価格が8000円ほど。バーでも1400‐1500円くらいであったと思う。それだけ聞くと高いが、 5年熟成とは思えないほどなめらかな味わいで、若さゆえの麦の甘みが良く出ている。 強烈なアルコール感はあるが、それを感じるのも最初だけで、ピートと塩気のインパクトに飲まれていく。なんというかベーコンっぽい。

熟成樽

新品の「オーク」(oak)樽に加え、「マデイラ」(madeira)、「シェリー」(sherry)などの酒精強化ワイン、「バーボン」(bourbon))の空き樽はオフィシャルボトルでもメジャーな熟成樽だが、そのほかにも「ラム酒(」rum)や「ブランデー」(brandy)と言った珍しい空き樽で熟成させることもある。
どんな樽でどのくらい寝かせるか。樽のサイズはどれか。など、ここで考えられる組み合わせは本当に多岐に渡る。現在では「オフィシャル」のウイスキーでも特殊な混ぜ方を売りにするものが増えてきた。

このように、単純にホッグスヘッド(HOGSHEAD)樽と書かれている場合は、バーボンウイスキーを熟成させていたオーク樽の可能性が高い。 豚の頭という名を持つのは、樽の重さが豚一匹と同等だったからと言われている。

ピート

「ピート」(peat)の有無も関わってくる。蒸留所によってはピートで焚いたモルトを使用して「オフィシャル」を作っているが、ボトラーの方から「ノンピート(アンピートとも)」(non-Peat,un-Peat)の原酒が欲しいと言われた時、それに応じることがある。
実際『カリラ』蒸留所では「オフィシャル」で「ピート」の有無を分けたボトルが存在する。
しかし蒸留の際に蒸留器にピートの香りが付いてしまうため、切り替えることを嫌がる蒸留所もある。

「ピート」が利く利かないでは、香りが大きく変わってくるので、見ておきたい部分の一つである。



これを表記するか否かは蒸留所によってさまざまであり、今回見ているボトルには書いていない。
このような場合は、蒸留所のオフィシャルにおけるピートの有無がそのまま反映されていると考えて良いだろう。
ロッホインダールは強いピート香をコンセプトに蒸留されたものであるので、アイラモルト好きにはたまらない。

チルフィルターの有無

「 ノンチルフィルター」や「ノンチル」(non-Chillfiltered)などと呼ばれ、冷却濾過を行わないで瓶詰めすることを指す。

樽出しのウイスキーは低温になると白濁する成分が出てくる。それを気にする消費者のために、瓶詰めの前に低温濾過を行い、白濁した成分を取り除くのが一般的なウイスキーである。やり方としてはマイナス4〜5度で冷却し、白濁した成分をフィルターでろ過する。

その一方で、白濁の原因となる成分もウイスキーの香味の一要素と捉える考え方もあり、
「ボトラーズ」ブランドなどからは「ノンチル」の状態で瓶詰めされた製品が販売されることもある。
また、ウイスキーの品質への理解が広まったためか、『アベラワー』の「オフィシャル」で「ノンチル」が発売されるなど、「オフィシャル」でも「ノンチル」を認める動きが起き始めている。

細かく、ぼやけているため見えづらいが、NON-CHILLFILTEREDの文字がある。

カラメルの添加

「オフィシャル」にも「ボトラーズ」にも共通することだが、味に変わりがない程度のカラメル色素を添加する場合がある。
特に熟成年数の若いウイスキーに多いが、見栄えよりも味わいや自然な風合いを大切にする「ボトラーズ」では、気を利かせて着色をしないウイスキーも多く、「ノンカラー」(non-Color)と表記されている。

こちらも見えづらいが、NO-ADDED COLOURINGと書いてある。ノンチルとノンカラーの二つがそろってこそ、ボトラーズの正統派だと言えよう。

次回は後編「ボトラーズ」ブランドについて

長いので、今回は前・後編に記事を分けた。
後編は著名な「ボトラーズ」ブランドを紹介していく。
ボトラーズのことまで押さえれば、スコッチウイスキーについての入門は終わりである。
最も、それぞれの要素をさらに細かく見ていく必要はあるけれど。

そういう知識はバーやモルト好きのコミュニティに飛び込んで、どんどん深めていってほしい。

後編はこちら

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編集部 岡田悠吾

ウイスキーが深まる季節がきました。

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