カテゴリ: ウイスキー

まずは傍らにThe Glenlivetを置いて、飲もう。

ザ・グレンリベット。
この酒を初めて飲む機会は、スコッチを飲み始めてから、きっとそれなりに早い段階で出てこよう。
初めてのスコッチがこれ。という人もきっと多い。
そんなありふれているモルトであるのだが、その味わいはいかでか評価が高い。

まだ飲んだことのない方は、早速飲もう。12年熟成で良い。
飲んだことを前提で、今回は語ってみたいからだ。

バランスの取れた、シングルモルト

グラスを傾けると、甘い果実のような香りがする。
最初の口当たりも甘く、ナッツ、バニラを思わせる甘い芳香が広がり、その後に少しのアルコールの辛さと苦さを伴って、スッと喉へと流れていく。
後味はすっきりとしている青さがある。蜜は少ないけれど爽やかな甘さを持った青りんごのようである。
この後味が意外と長い。微かな残り香がふわりと続いていく……。

まるで陽光を浴びながら、小鳥のさえずりで目を覚ますようなシチュエーションを想起させる、そんなウイスキーだ。

ファンが多く、メジャーなモルトであるザ・グレンリベット。
以前ACCETORYでも取り上げた「グレンフィディック」と味わいが非常に似ていることもあり、
しばしばこの二つのモルトは比較されがちである。

どちらが良いか、という点は置いておくとして、
グレンリベットの方が個性の強い味わい(濃い味わい)である。

この酒はバランスのモルトである。
普通シングルモルトと言えば、他と比較して何かが尖っていることが評価されがちである。
だから、シングルモルトにバランスが良いだなんて評価を下すと、凡百のウイスキーであるかのように想像するかもしれない。

けれど、その誤解をしっかりと取り払いたい。裏を返せばそれは、ブレンデッドが多くのモルトをブレンドすることで整える基準を、一つのモルトが天性に備えているということでもある。
その奇跡のバランスに、我々は敬意を払わざるをえない。

グレンリベットは、ゲール語で「静かな谷」という意味を持つ。
グレンフィディックに次いで世界で二番目に売れているシングルモルトである。
もともと19世紀初頭まで密造酒として蒸留されていたスコッチウイスキーだが、
時のイギリス国王、ジョージ4世に気に入られたウイスキーを政府公認のウイスキーとしたことを皮切りに、それまでの重税の是正や、多くの政府公認蒸留所が誕生した。
何を隠そう、その初めての政府公認蒸留所というのがグレンリベット蒸留所なのである。
「すべてのシングルモルトはここから始まった」
といううたい文句も、ただのおごりではないことが分かる。

その味の完成度と圧倒的な知名度から、同地域で「グレンリベット」を名乗る蒸留所が続出した。
そこで、それらの蒸留所と自社とを切り離すために、法的な手段を取り、
結果として定冠詞のついた「The Glenlivet」を名乗ることが出来る唯一の蒸留所となった。

グレンリベット12年

グレンフィディックの12年と同様に、シングルモルトの入門酒として位置づけられる一本。

この酒をもし、初めてのスコッチとして飲んだ人(これから飲む人も含め)は、きっとそのバランスの良さを、「飲みやすい」「美味しい」で片づけてしまうだろう。
だが、より多くのシングルモルトを飲んで、味わって、スコッチの魅力に充分取りつかれてからまた飲んでみてほしい。
一本のシングルモルトがかくも香味のバランスを取っているということに驚く。
近年のリベットはピート香こそないが、花のようでいて、爽やかなハーブ香もあり、蜜のような味がある。このモルトは、人を笑顔にさせるコツを知っている。
飲みやすく、変なノイズもクセもない、言わば屈託のないモルトだ。
良くも悪くも軽いその口当たりが、玄人には物足りないか。

700mlで3600円ほど。
フィディックよりやや高値だが他のシングルモルトよりは手が出しやすい。

グレンリベット18年

12年と18年の間に15年熟成が存在するが、ここでは18年を推したい。
12年の持つ花のようで蜜のような香味と、
15年の持つ甘さの中に目立つ、ビターでスパイシーな香味、
その両方を兼ね備えながらも、各要素を極大にまで高めている。
とにかく濃く、深い味わいなのである。
12年ですらも、多くのテイスティングノートを持つが、
18年はその上を行く複雑な香味。
加水をして、その香味を紐解いていかねば、この美酒を本当の意味で飲んだことにはならないだろう。

700mlで7000円ほどと、18年の熟成ものの中では破格の値段。
常飲で飲むにはかなり高いが、一度飲んでみてほしい。

猛々しいモルトの中で優美であること。

フィディックの回でも述べたが、固定観念はしばしば人を油断させることがある。
やけにピーティだったり、突き抜けたシェリーの香味がするもの、南国のフルーツの香りと言われるピアレス香があるもの。個性的なシングルモルトを取り上げるなら、枚挙に暇がない。
しかし、そのようなモルトが立ち並ぶ中で、バランスの取れた味わいであるグレンリベットは、本当に奇跡的に生まれたものなのだろうか。
全てのシングルモルトの原点であること、
未だ多くの人々に愛飲され続けていること。
それらを符合してみると、
グレンリベットを基準として、それ以外の個性的なモルトの方が脱リベット化をするように、多彩な味わいへと変化していったのではないか、と
そんな風に想像してしまうのである。

これからも、全ての個性的なシングルモルトの渦の中で、優美な味わいを持ったモルトでいてほしい。

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編集部 岡田悠吾

ウイスキーが深まる季節がきました。

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