BBW金沢を通して見る、金沢のベルギービール事情

5月25日から金沢市でベルギービールウィークエンド(BBW)が初開催されたその模様と、金沢のビール事情をレポートする。果たして金沢では、ベルギービールがどのように扱われているのだろうか。

BBWが金沢で初開催!まずは市内のベルギービールを楽しむ。

5月25日から金沢市でベルギービールウィークエンド(BBW)が初開催された。
BBWはブリュッセルにある世界遺産のグランプラスにて毎年9月上旬に開催されているのだが、2010年に東京で初めて開催されて以来、年々参加者が増えている人気のイベントだ。

今年は名古屋・福岡・横浜・大阪(今季は開催終了)・金沢・札幌(6/22~6/26)・仙台(7/14~7/18)・東京(9/16~9/25)と開催土地は最多となった。

もちろん、金沢でこのような大規模なベルギービールのイベントは初めてである。このようなイベントが成立するほどに金沢にベルギービール好きがいるのだろうか…。

とりあえず偵察、とばかりに金沢市内でベルギービールを飲めるところを訪問。
「kayakaya」というそのお店はパスタのお店でベルギービールも置いてあるらしい、ということまでは知っていた。

けれど実際はワインとベルギービールが充実したお店だった。
通常はベルギービールにはベルギーの料理を合わせることが多い。
しかし、ここではホタルイカのスモークなど金沢ならではの食材をベルギービールなどに合わせて提供してくれるのだ。
これはパスタなど食べている場合ではない。
飲まねば、と昼から本気の飲みモードに転換。

アヘル・ブロンドというビールとスモークの盛り合わせをペアリングさせる。
皿が運ばれてきた瞬間、ほのかにスモークの香りがする。
目をとっただけのホタルイカは口の中で柔らかくビールと一体化する。
他にもバイガイは身よりも肝のほうがアヘルには合う。
口の中に広がるスモークされた香りと後に続く濃厚な味わいはアヘルとの相性が絶妙。



燻製三種盛り合わせ 店主がスモークしている。ビールやワインを邪魔しないので合わせられる種類は多岐にわたる。



アヘル・ブロンド ビールの専用グラスはほとんどないが、似たような形のもので代用しているという。

岩ガキはティママン・ブロンシュというランビックビールと合わせた。
ランビックとはブリュッセル近郊での伝統的製法に対する原産地呼称で、かなり酸味が強い。
しかし、それがレモンとの酸味とも通じるため、むっちりとした岩ガキの味わいを残したまま口の中をさっぱりとさせてくれる。



岩ガキとティママン 新鮮な海のものとベルギービールの相性もばっちり

金沢でのベルギービールのペアリングはここに一つの完成形を見た思いだった。

舞台をBBWへ移り、偶然の出会いが。

身も心も満たされ、ほろ酔い気分で会場入り。
イベント開催30分前というのにスタッフしかいない。
客が自分ひとりだったらどうしようという不安が頭をよぎる。
しかし、開催時刻間際になると、かくれんぼでもしていたかのようにどこからともなく人が集まってきた。
しかも、ほとんどの人が前売券を買った人だけがもらえるコインポーチを手にしている。
安心したところでよくよく見まわしてみると年齢層が高い。
一般的なBBWでの平均年齢は30~40代なのだが、金沢ではアラ還の諸兄姉がほとんどである。

金沢の日本酒文化と昨今のクラフトビールブーム融合の結果か?と思いきや、然にあらず。
実は金沢市とベルギーのゲント市は昭和46年から姉妹都市となっているため、ベルギーという国に対して親和性があるのだ。
商工会など地元の諸団体の皆さんが市を挙げて後援しているイベントということで顔を出してくれているのだ。
そうこうしているうちに仕事上りと思われる本当の意味での一般の人たちが増え始め、安心してビールを飲み始めることにした。

BBW金沢では特に目新しいビールもなく、販売のブースも少ないことはわかっていた。そこで、以前に飲んだことはあるが、味わいを再確認したいものを中心にいくつか飲んだ。



ビールを品定めする人たち。 5日間でのべ9,500人もの人が87種類のベルギービールを楽しんだ。



ベルギービールウィークエンド専用グラス BBWではスターターキットにグラスが付いてくる。このグラスにビールを注いでもらい、場内にあるグラスリンサーできれいにしてから新しいビールを注いでもらうシステムだ。グラスは持ち帰りOK。グラスを持参してコインを買えば別の日でもビールを楽しむことが出来る。

シュフ・ソレイユ150

ベルギーと日本の友好150周年を記念して作られたビール。ブロンドタイプで無濾過。柑橘系の華やかな香りが特徴的。

コルセンドンク・ブロンシュ

ナミュールの天然水と小麦が作り出すさっぱりとした飲み口はいくらでも飲めそうだ。

セーフ

ソバや燕麦を使っている。80年前にレシピが失われたが、近年再現に成功した「幻のビール」。

シメイゴールド

「トラピストビール」を名乗れるものは世界中で11しか認められていないが、そのうちの一つにして最大のブランド。ゴールドはそもそも修道士たちが飲むために作られたのだが、あまりにも人気があるので外販するようになった。

レフ・ブラウン

以前は修道院で作られていたが、現在は工場にレシピを譲渡したものなどを「アビィビール」というカテゴリにしている。レフは現在ではアンハイザー・ブッシュ・インベブ社の手になる。ブラウンタイプで黒糖やキャラメルのようなマイルドさがある。麦芽の重厚感ときりりとした味わいを同時に感じることが出来る。

ストラッフェ・ヘンドリック・クアドルペル

ドライフルーツにも似た濃縮されたフルーティーさが口の中に広がり、鼻に抜ける香りも甘く濃厚。それだけに、アルコール度数は11%と高めなので注意が必要。

楽しく飲んでいると不思議な再会を果たした。
以前、都内のベルギービールバーで働いていた青年だ。
聞けば「香林坊ジビルバ」という店で店長をしているという。

お誘いをいただいたので、BBWの会場を後にして行ってみるとほぼ満席。
地ビールバーだからジビルバ、というわかりやすいネーミングとバランスの取れたラインナップが金沢の人に愛されている理由だろうか。
日本のビールのほかにデリリウム・トレメンスというベルギービールを樽生で繋いでいた。
アルコール中毒による手の震え、という意味のこのビールはアルコール度数が8.5%もある。
夜はまだ長いのでフォーセゾンというボトルビールにした。
ベルギービールバー仕込みのビール管理の賜物だろうか、それともたまたま美味しいロットだったのだろうか。
いつもより味わいがさっぱりとしてきりりとして感じられた。



香林坊ジビルバのメニューボードと喜澤店長。 地元だけ、偏った味わいだけではないのが素晴らしい。店長は楽しく語らいながらお客さんの好みのビールを探っては薦めている。

そろそろBBWも終わろうかという時間になってきた頃にジビルバから移動。
本命の100種類のベルギービールを置いているというバー「ゲデレー」だ。

薄暗い店内の難しい顔をして飲まなくてはいけないのか、とドキドキしながら店の前にやってきた私の目に飛び込んできたのは「小便小僧の顔はめ看板」だった。
すこし混乱しながら店内に入る。薄暗い。スローなジャズが流れている。
きっと酔っているから顔はめ看板なんていう幻を見たのだろう、と思うことにした。
店内の入ってすぐの所にはサンフーヤン醸造所の大きな看板がみえた。
サンフーヤンはスパイスを使うのが上手いと定評のある醸造所だ。
では、とサンフーヤン・グランクリュを注文したが、欠品していた。
マスター曰く、都内ではドのつくような定番でも金沢では定期的に入荷せず、欠品することもあるのだという。かといって輸入業者と直接取引ができるほど大量に在庫を抱えることはできない、とも。
それでも、たまに入荷したものを喜んで飲んでくれるお客さんがいるから、と嬉しそうに話すマスター。
その時点で先に来ていたグループが帰り、客は私一人。
サンフーヤン・グランクリュの美味しさについてマスターを独り占めして語りながら、久しぶりのコルサイア・キュベ・スペシャルを飲む。
アルコール度数高めだが、爽やかな、ほんのりとした甘味すら感じる後味。



コルサイア・キュベ・スペシャル コルサイヤは専用グラスで。この豊かな泡立ちも特徴の一つ。

気が付くと11時を回り、続々と来客がある。
BBWの出店者の姿もあった。しかし、ベルギービールを飲みにやってくる人ばかりではないようだ。
どちらかというとマスターの人柄に惹かれて常連となり、たまにおすすめのベルギービールを飲む、といった感じだ。
常連さんと思しき人たちは初訪問の私にも和やかな会話の輪に入れてくれた。
そんな楽しいひと時をすごしたせいだろうか、気が付くと私は顔はめ看板で上機嫌の笑顔をカメラに向けていた。

初めてのBBWを終えた、金沢のこれから

今回の金沢訪問で強く感じたのはベルギービールの認知度の高さのわりに日常生活での選択肢にはなりえていないという現状だ。しかし、BBWで飲んだ後に金沢の繁華街でBBWグラスを持って歩く姿も散見された。市民生活に根付く予感に心が震えた思いだ。BBWが終わったこれからが楽しみだ。来年の金沢はまた違った顔を見せてくれそうだ。

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