カテゴリ: ウイスキー

前回の記事では、テイスティンググラスを使って自宅にあるウイスキーを飲んでみようというところで結びとした。

しかし、そうして手元のウイスキーをテイスティングしてみても「香りが強くなったかな」くらいで、何が個性なのかいまいちよくわからないという方も多いかもしれない。
これは意識するポイントがわからなければ当然の話だと思う。
「意識して飲め!」だけで理解できる話なら、元気があれば空も飛べるレベルの根性論と何も変わらない。

ウイスキーの個性を理解するには、香味の判別とウイスキーに対する知識の両方が必要だ。
今回はファーストステップとして、テイスティングの基本的な流れと、その際に意識するポイントを紹介していく。

グラスにウイスキーを注ぐ

まずはテイスティンググラスにウイスキーを注がなければ始まらない。
ワインではサーブで失敗すると酸味が出たり、香りが閉じこもったりしてしまうケースがあるが、ウイスキーはそこまで気を使う必要は無い。
もちろん、そうした気難しいボトルがないわけではないが、一般に流通する大多数はフレンドリーだ。
特段決まりはないが、写真のようにグラスの内側を滑らせるように少量を注げば問題ない。

注ぐ量については、グレンケアンなど通常サイズのテイスティンググラスであれば、15~30ml程度が適量だ。
以前、ホワイト&マッカイ社のマスターブレンダーであるリチャード・パターソン氏に「正しくテイスティングするコツは何か」と質問をしたことがある。
返ってきた言葉は「君たちはグラスに注ぎ過ぎなんだ」ということだった。
「40mlも60mlも注いでグラスに鼻を突っ込むなんて、アルコールを鼻に入れるようなものだ。30ml、いや15mlでも良いくらいだよ!」
そう言って、彼は酔って真っ赤な笑顔でグラスの中身(確か21年モノのジュラ)をぶちまけた。相変わらずのドランカーである。

この回答は、いささか同氏の誤解がベースになっているとは思うが、言っていることはもっともだ。
ウイスキーを多く注げばそれだけ液面が上がり、グラスの内部の空間が少なくなり、香りの増幅効果は失われる。
量を正確に測るにはメジャーカップが必要だが、この辺は多少アバウトでも良い。
以下に15ml、30mlを注いだグラスの写真を掲載するので参考にしてほしい。

テイスティングの流れと意識すべき要素

テイスティングの流れは、以下のStep1からStep3を繰り返し、時間での変化も感じながら「樽由来の香味」「原料由来の香味」「熟成環境(地域)由来の香味」・・・など、構成している要素を切り分けて、さらに細分化するプロセスを経ていくのが理想的な形と考えている。
しかしウイスキーを飲みなれてい方には、何由来なのかを判別することは難しく、例えばいきなり「樽を感じてみましょう」などと言うのは、おおよそ入門向けとは言い難い。

そこで、日常的な感覚で代用できる内容を中心に構築した、①~⑦の要素を紹介する。
これらは個人的に意識している内容の一部を、テイスティング入門者向けにアレンジしたものであり、それぞれが先に書いた構成要素に繋がるイメージとなっている。
慣れないうちは、ウイスキーを一嗅ぎ、一口含む中で、1項目ずつ意識しながらウイスキーの香味を分析したい。

テイスティングで意識する要素

①甘み、辛み、酸、苦み、渋み、煙たさといった要素の中で、何を強く感じるか。
②木を思わせる要素は何があるか。生の木っぽさか、焦げているか、乾燥した華やかさか。
③アルコール臭や刺激はどの程度感じるか。強いか、弱いか。
④口当たりの粘度はどうか。粘性があるか、サラサラしているか。
⑤各要素の濃淡は。ダシをとったスープのような、味の濃い薄い以外のコクも感じるか。
⑥甘みでイメージできるものは何か。(黒蜜、バニラ、カラメル、ガムシロップ、など)
⑦果実など具体的にイメージできるものはあるか。

Step1.ノージングする。

グラスにウイスキーを注いだら、まずはノージング(香りを嗅ぐ)でアロマを確認する。
いきなりグラスに鼻を突っ込むのではなく、少し距離を置きながら自分の感覚を慣らしていこう。
また、香りの強いものだと、グラスに注いだ段階から芳醇なアロマを周囲に発散させるものがあるので、その点も注目したい。
時折スワリング(グラスを振ってウイスキーを回す動作)をはさみつつ、どのような要素が香りの中にあるのかを確認する。

Step2.口に含み、舌で転がす。

ノージングで印象を軽く掴んだ後は、グラスを傾けて少量を口に含む。
ウイスキーはビールなどとは異なり喉越しで飲むようなものではない。ほんの1~2mlを口に含み、舌の上に乗せ、口の中で転がしていく。
唾液と混ざることで変化もあるだろう。どのような個性が見えてくるだろうか。
シロップのような甘みがあったと思えば、乾いた木材のような香味が強く感じられることもあるし、塩気を思わせるしょっぱさが感じられる場合もある。
香り同様に、ウイスキーを構成する要素を確認していきたい。

Step3.飲み込んだ後で鼻に抜く。

唾液と混ざったウイスキーを飲み込み、口の中に残っている空気を鼻に抜く。
ここでは口に含んだ時とは違った香味が、口内から鼻腔にかけて抜けていくことだろう。この最後に広がる香味を余韻という。
人間は味覚より嗅覚のほうが様々な要素をキャッチできると言われており、完成度が高いウイスキーには、非常に長い余韻だけでなく、陶酔感すら与えてくれるものがある。
後半に出やすい香味としては、樽由来の華やかさ、渋み、スコッチタイプのウイスキーであれば、ほろ苦くスモーキーなピートフレーバーなどがある。
テイスティングでは口に含んだ味だけではなく、余韻の変化や長さにも注目してみてほしい。

テイスティングとチェイサー

自宅でテイスティングをする際、ウイスキーとセットで準備したいのがチェイサーだ。
チェイサーは読んで字のごとく”追いかける”という意味で、一般的には口の中をリフレッシュさせたり、体内のアルコール濃度を下げる目的などから水(ミネラルウォーター)を指すことが多いが、必ずしも水である必要はない。
人によっては度数が低く味のクリアなアルコールをチェイサー代わりに使う場合もあるし、テイスティングには向かないが、ビールをチェイサー代わりにする飲み方もある。
今回はテイスティングの基本を紹介する記事であるため、銘柄は指定しないが、まずは一般的に流通するミネラルウォーターの軟水から始めたい。

テイスティングの工夫

先に紹介したチェイサーだけで、テイスティングに様々な工夫をすることが出来る。
通常はStep3の後でチェイサーを飲み、口の中をリフレッシュさせる。
ここで意図的にチェイサーを飲まずにフレーバーを蓄積させてみたり、ウイスキーを飲み込んだ直後に間髪いれずチェイサーも飲み込んでみるなど、タイミングの違いで感じられるフレーバーが変化し、テイスティングの幅を広げることが出来る。
また、水は水でも、硬度の違いだけでなく、そのウイスキーの仕込み水と同じ地域で汲み取ったミネラルウォーターもあり、組み合わせを楽しむのもテイスティングにおける工夫のひとつと言える。

そして水を用意したところでもうひとつできる工夫が、ウイスキーへの加水である。
テイスティングにおける加水の是非については、基本自由で構わないと考えている。
ストレート(ニート)が最高と言うつもりもないし、ブレンダーに習って1:1に加水しろとも言わない。
注意すべきは、偏った至上主義は学ぶ機会を奪うことに繋がりかねないということだ。
まずはストレートで飲み、次は少量ずつ加水を試してみるのがいいだろう。
加水によって、ストレートでは感じられなかった変化を感じることが出来るボトルも多数ある。
そうした香味の変化や、自分にとって好ましい割合を探すことは、テイスティングをしているからこそ明示的に判る違いであり、ウイスキーの楽しみ方のひとつと言える。

著者から一言

ここまでテイスティングの基礎について触れてきたが、大事なことは、自分が感じたことは「正しい」ということにある。
自分は初心者だから、感じたフレーバーが間違っているかもしれない、ということは特に考える必要は無い。
仮に多少思い違いがあったとしても、それはその後の経験が解消してくれる。
自分の言葉で、自分のテイスティングをすることが上達の近道だ。

次回はさらに踏み込んで、ウイスキーの個性を形成する代表的な要素である”樽”についてフォーカスする。
樽由来の色合いや代表的な香味、そしてその香味を感じられるウイスキーを紹介していく。

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くりりん

ウイスキーの魅力に取り憑かれ、日々琥珀に溺れる妻子持ち会社員(32)。ブログ「くりりんのウイスキー置場」の管理人です。http://whiskywarehouse.blog.jp/

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