カテゴリ: ウイスキー

モダンモルトウイスキーマーケットが今年も開催。

今年で10年目となる老舗ウイスキーイベント。主にプロの方(酒販店や飲食業)を対象にしたイベントで、惜しむらくも、今回は一般の参加ができない形となった。
各メーカー、輸入元が集まるブースで実際に試飲をしながら、ボトルや蒸留所についての知識を深められる。

一般参加こそなかったが業界の熱意だけでも相当なものがあり、6時間に渡って行われたイベントに1500人の参加者が集まった。
入手困難な山崎シェリーカスク2016や、マッカラン1824 No.6を始めとしたの限定商品の抽選販売もあり、食い入るようにサンプルを見つめ、購入を検討しているバーの方々を多く見た。



また、セミナーブースでは創業10年を迎えたアイラのアランやグレンドロナック、キルホーマン蒸溜所の新商品についての情報や、飛ぶ鳥を落とす勢いのKAVALAN蒸溜所の今後の動向、そして今秋蒸留を開始するガイアフローの静岡蒸留所の進捗など、講演の内容自体も見逃せないものばかりが揃っていた。

その中でも個人的にはガイアフローの動向に自然と注目が向いた。
というのも、今年催されてきたウイスキー関連のイベントなどを介して、ウイスキー業界の今後の動向に一つの流れのようなものが見えてきたからだ。

国内ウイスキーをめぐる、クラフトの動き。

さて話はさかのぼり、 今年の春先から今に至るまで、偶然にもある三つのクラフトウイスキーの芽吹きを実感することとなった。
一つは、堅展実業の厚岸蒸留所、一つはガイアフローの静岡蒸留所、もう一つは、未だ検討段階ではあるが、木内酒造の掲げるウイスキー製造の構想だ。

この三つの蒸留所には、その土地の原料を使用し、その土地で熟成させるという本当の意味でのローカルなクラフトウイスキーを作るという構想を持っているという共通点がある。
簡単にではあるが、このクラフトウイスキーの新興勢力たちについてまとめていきたい。

堅展実業 厚岸蒸溜所

今年3月に行われたボトラーズ&クラフトウイスキーフェスティバル2016にて、代表の樋田氏と蒸留に携わるメンバーによって、蒸留所建設の進捗と今後の展開についてを解説してもらうセミナーが開催された。
海の近くで霧があり湿潤な気候であること、そして豊富な泥炭(ピート)が取れることから、スコットランドのアイラ島を思わせるような仕上がりになることが想定されている厚岸。工事は順調に進み、蒸留は今秋から始まる予定となっている。また、すでに海沿いの貯蔵庫で江井ヶ嶋や秩父のウイスキーを熟成させることによって土地固有の熟成傾向を掴もうという動きがある。

将来的には輸入原料に頼らず、厚岸で収穫された大麦や酵母、水、泥炭などを用いて純粋な厚岸モルトを作ることを構想している。
ただ、蒸留を始めてから数年は輸入原料に頼りながらの製造になると思われ、オール厚岸のウイスキーに着手し始める日取りはまだ先のようだ。

ガイアフロー 静岡蒸留所

ガイアフローも厚岸の蒸留所と同様にウイスキー蒸留に先立つ準備を終え、この秋より静岡で蒸留を開始するという。
当日の講演では、見学を考慮に入れた静岡県玉川地区の蒸留所建設の様子をいち早く知ることができた。
ダンネージ式の貯蔵庫や、オレゴンパインで出来た発酵槽、そして何より、旧軽井沢蒸留所のものを落札し、再利用するポットスチル。我々ウイスキーファンとしては、軽井沢のポットスチルがまた動く、と聞くだけで胸が熱くなる思いがある。

個人的な予測だが、オールジャパニーズウイスキーを最も早く出せそうなのは、この蒸留所ではないだろうかと考えている。この秋に蒸留が開始されることは厚岸と変わらないが、すでに近隣で大麦の栽培を始めており、数量的な規模がどれくらいかは別としてオールジャパニーズウイスキーの完成が一番早いことが想像出来る。

駐車場の整備さえ終われば、早くも17年の春には見学自体はできるという(試飲はもちろんできないが)。
東京駅から2時間で向かうことができる立地を考えても、足繁く通うことのできることのクラフトディスティラリーとしても、目が離せない存在だ。

木内酒造

先日、別件で木内酒造にお伺いした際、新たに常陸野の国産ウイスキーを作っている様子を見学させてもらった。
木内酒造では、常陸野ネストビールで使用する麦を地元農家から全量買取しているのだが、中にはビールモルトのグレードに通らなかった麦が発生してしまう。そのような麦をウイスキーのモルトとして使用することで無駄を無くしていきたいという考えから、ウイスキー製造の構想が始まった。
まだテスト段階として小規模のポットスチルで蒸留、熟成しているだけではあるものの、常陸野オリジナルのウイスキー実現に向けて確かに動き始めている。

検討されている樽は、十勝ワイン樽、スパニッシュオーク、など。他にも日本ならではの木材や他のウイスキーのセカンドフィルなど、興味深い樽も存在していた。これからの動向に期待したい。

この10年と、これから先の10年

この10年、いや、正確にはここ5年のうちに、日本のウイスキーに対しての認識は変わった。
国内ではマッサン効果によって、国外では山崎シェリーカスクが最高のウイスキーと評されたことによって、今やジャパニーズウイスキーは原酒不足。うれしい悲鳴ではあるが、ウイスキーの熟成の時間はごまかせない。緩やかになってきたとは言え、世界的な原酒不足の中でもひときわ、ジャパニーズが厳しいのは周知の事実だ。

この時流を受けたからこそなのだろうか。
ジャパニーズウイスキーは原酒不足の問題を片脇に抱えながらも、原料にもこだわった純国産のウイスキーを製造していこうとする、新たな動きが始まろうとしている。

クラフトウイスキー。その動きは今、日本のウイスキー業界の中で見逃せないものとなっている。
しかしそのようなウイスキーは、彼らのような蒸留所だからこそ、少量だがこだわりを持って蒸留するからこそ、できるものでもある。

特に上で見てきた三つの蒸留所はすべからく麦から育て、蒸留、熟成することを視野に入れている。
これは、大手の蒸留所であればあるほど、ハードルが高くなってしまう。狙っているマーケットの規模が大きすぎるからだ。
しかしながら、小回りがきいて高付加価値をつけやすい小さな蒸溜所はこう言った取り組みがやりやすい。
同時代的に現れたこの三つの蒸溜所が、ある意味で同じ方向を向いているということ。その取り組みこそが日本の次のウイスキーの潮目であると、確信に近い思いを抱いてしまう。

地ビールがクラフトビールへと変わっていった様に、地ウイスキーにも、第二フェーズがすでに始まっているのである。日本の土地を活かした、日本ならではの純国産のウイスキー。コアなファンはもちろん、一般大衆にも分りやすいそのセールスポイントが、今後どのように注目されていくのかは見ものだ。
蒸留酒の熟成は、時短が不可能であるという点が非常にもどかしくもあるが、次の10年、日本のウイスキー業界はまだまだ楽しめるのだと思って、温かくこの流れを見守っていきたいと思った次第である。

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編集部 岡田悠吾

ウイスキーが深まる季節がきました。

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